二枚目 「夢」

文字数 1,692文字

誰にだって、「夢」がある。
人によって、その「夢」は様々だ。

ある少年には、「野球選手になりたい」という夢がある。
野球を沢山練習して、甲子園に行って、いい成績を残して、プロになりたいのだと。
そして、いつか自分を応援してくれた人に恩返しがしたいのだと。

ある少女には、「医者になりたい」という夢がある。
沢山勉強をして、試験に合格して、医者になりたいのだと。
そして、いつか沢山の命を平等に救うことができる人になりたいのだと。

ある青年には、「とにかく皆に認められたい」という夢がある。
沢山努力をして、何かしらで有名になって、皆から認められたいのだと。
そして、いつか自分を馬鹿にした奴らに見せつけてやりたいのだと。

誰にだって、「夢」がある。
無論、その「夢」は叶えることだってできる。

少年は、野球選手になった。
沢山練習をして、甲子園に行って、いい成績を残して、プロになった。
そして、自分を応援してくれた人に恩返しができた。

少女は、医者になった。
沢山勉強をして、試験に合格して、医者になった。
そして、沢山の命を平等に救うことができる人になった。

青年は、皆から認められた。
沢山努力をして、とある才能を開花させ、有名になって、皆から認められた。
そして、自分を馬鹿にした奴らからも認められた。

少年も、少女も、青年も、「夢」を叶えることができた。
「夢」を叶えた人は、誰もが幸せになっていた。
幸せになっていた、はずだった。

けれど、不思議なことが起こった。

「夢」を叶えてしばらくすると、誰もがどうすればいいのか分からなくなってしまったのだ。

少年は、野球選手になる「夢」を叶えた。
けれど、あれほどなりたかった野球選手になって、期待とプレッシャーに潰されることが多くなった。
今では、野球を純粋に楽しむことができなくなっていた。
そして、少年は自分自身を見失って、野球を辞めた。

少女は、医者になる「夢」を叶えた。
けれど、あれほどなりたかった医者になって、「辛い現実」を知った。
今では、沢山の命を平等に救うことができなくなっていた。
そして、少女は医者としての「意義」が分からなくなり、医者を辞めた。

青年は、皆から認められるという「夢」を叶えた。
けれど、沢山認められても、自分自身が何も変わっていないことに気付いた。
今では、どんな事をしていても楽しくなくなってしまった。
そして、青年は「存在意義」を失い、廃人になった。

「夢」は誰にでも叶えることができる。
けれど、「夢」を叶えたから幸せになれるとは限らない。
何故なら、

が叶えられてしまうということは、「生きる意味」を失うということでもあるからだ。

だから、私は「夢」を持っていない。

「夢」を持たなくてもいいと思っているし、その「夢」を叶えるために「夢」に向かって突き進むなんてしたくない。
だから、夢なんて要らない。

その代わりに、私は自由に生きたい。

例え、趣味を追い求めなくたっていい。
例え、職に就かなくたっていい。
例え、周囲から認められなくたっていい。

だって、そうしなくても生きていけるはずだから。

よく、「夢を追い求め続けろ」とかあるけど。
「夢」なんて叶えなくていいし、叶える必要もないと思う。
「あぁ、やっぱり夢を叶えるなんて無理だ」って思ったら、諦めてもいいと思う。

そもそも。

「夢」という人生のレールを、無理に辿っていく必要はないと思う。
そのレールの途中には、いくつもの分岐点が必ずあるから。
その分岐点で、急な路線変更をしたっていいと思う。

それに、「夢」を追いかけすぎて自分自身を壊してしまうのは良くない。

だから、別に「夢」なんて諦めたっていいと思う。

寧ろ、自分自身が壊れてしまう前に諦めて欲しい。
「夢」なんて諦めたっていいんだから。
それよりも、現実を見て欲しい。
「ここ」には、楽しいことで満ち溢れているんだから。

最後に、もう一度。

「夢」なんて叶えようとしても辛くなるだけだから。
叶うのかどうか分からない「夢」よりも、今を楽しんで欲しい。
好き勝手できる「今」を、沢山楽しんで欲しい。

だから。

自分の人生を縛り付けてしまうような「夢」なんて、叶えなくてもいい。
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