文字数 871文字

報われない恋愛
お別れの時がきた
なるべく悲しく終わらないように 愛おしく まーるく終われるように 私はヤツとその時を過ごす

おおきな「時の波」がゆっくり2人の背中を押して、この日がきたのだ

悲しみをひどく感じない

いつものレストランで食事をしている
さわこは ぼーーっと彼の顔をみる 細かく観る ニヤニヤとしてる細い目 口元 上唇の両端が リラックスしてるから緩んでる いつもみてる鼻 白いワイシャツに 少しくたびれてるスーツ 仕事の話をタラタラと話している 少し低めのセクシーな声

さわこは この2時間の食事デートで 一生分のヤツとの時間を妄想すると決めた 200%の脳みそを使って。
世界中を一緒に旅したり 子供が出来て リビングで楽しく過ごしたり.. 今までの熱い夜も思い出した 急スピードで しかし丁寧に 細やかに 妄想する 悔いが残らないように

目も耳も指も髪も 一生分観る
声も耳の奥の おくーーの方までで

感じて

記憶する

私の名前を呼ぶ声
私の名前を 
呼ぶ 
寂しがり屋のいたずらっ子

(記憶にしっかり残したよ
ずっと忘れないよ さようなら
幸せにね
ありがとう)

「ねえ、話聞いてる? さわこ さっきからボーとしてるよ」 「聞いてますよ」 「だから大変なんですよ、この時期は。提出期限も迫っているし 早くしろ早くしろって言ってくるから」「そうですよね」「これからどこいく?」「今日は帰ります。明日早いし」「えー そーなの?ざんねん じゃぁまたの機会ですね さわこ」 さわこにキスをしてくる (ありがたい このキスも忘れないように 記憶する)

ヤツにとってはいつもの夜

私にとっては 最後の夜

ヤツは悪くない

私も悪くない

苦しい時は もがいて もがいて でも焦って色々決めなくていい

いずれ大きな「時の波」が
2人を行くべき方向に流してくれるから

苦しい恋愛も 時が経てば
いい部分の思い出 映像だけが
脳に残るようになる.. 不思議と

人間の回復力 生命力 環境や状況の対応力とは
思っている以上に 優れている



「さわこ、やっぱり 今夜 一緒にいようよ」


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