第1話 ハダカデバネズミ作戦

文字数 499文字

 俺はダンゴムシが苦手だ。動けなくなるほどこわい。だから諜報部でも書類整理が関の山だ。愛国心なら誰にも負けないのに。
 しかし千載一遇のチャンスが訪れた。
「ハダカデバネズミ作戦」
 無酸素で十八分まで耐えられるこのネズミ並みの能力を得て、敵国の宇宙船設計図を盗みだせ。
 設計図が保管されている部屋の酸素濃度はゼロ、高線量の放射線で満ちている。薄手の放射線防護スーツはできたが、呼吸回路を搭載すると狭い廊下を抜けられず、今まで手が出せなかったのだ。

 廊下も部屋もジメジメして水滴がひどい。滑らないよう慎重に設計図に近づく。
 背後に気配が。
 俺は絶叫した。
 ダンゴムシ。
「ダンゴクマムシ作戦を知らないのか」
 話しかけてきやがる。
「クマムシは体表の水から酸素を取り込める」
 背丈が一メートルはある。
「人間の千倍以上の放射線に耐えられる」
 丸まっては床を転がり笑う。余裕かよ。
「この能力を人間に移植するのは難しかったが、ダンゴムシを混ぜたら解決した。お前も試してみないか。一緒に宇宙を取ろう」
「嫌だ」
「愛国者だな」
 ダンゴムシになるくらいなら死んだほうがマシだ。
 そう言いたかったが、もう十八分経った。
 
  了

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