第１話

入浴

能登の大地震から今日で二週間経った
ある被災者の方がインタビューで
今一番望むことは何ですかと訊かれ
お風呂に入ることですと答えていた
風呂に入ることは我々にとって
これほど重要なことなのだと思わされた

風呂に入るということは
つつがなく健康に毎日の生活を
送られているということであり
それ以上に日々の穢れや汚れを
洗い落とす禊や祓いのような意味も
有しているのではないだろうか
風呂に入るということは
心身ともに洗い清め　日々
新たに再生するという一種の
儀式のような役割も我々の生活に
果たしているのではないだろうか
そうであれば　うちのめされた
被災者の方が何よりもまず
風呂に入ることを今　望んでいる
ということが分かるような気がする

洗礼や沐浴というものも　やはり
水の持つ霊的な力によって
再生を果たすための儀式だろう
キリスト教入信の洗礼もガンジス川での
沐浴もそのための営みに違いない

能登の被災者の方々が　一日でも早く
ゆっくり入浴することが出来る日が
やって来ることを心から祈りたい
魂の深い傷口が少しでも癒され
心身ともに立ち直るために


ファンレターさまの紹介

　新たに再生するために

入浴がつつがなく行える日常がどれ程ありがたいことかよくわかりました。健康であり無事に過ごせている証なのだと改めて思いました。被災された方々が心からホッとした思いで湯に浸かれますように…水は命の源であり、我々の故郷なのだと思います。この世に産まれる前から母体で羊水に揺蕩い、誕生してすぐに優しい手に抱かれながら産湯に浸かる。そしてTamTam2021さんの仰るように、水は禊をし、罪や穢れを祓う特別なものなのだと思いました。皆が柔らかな春の新芽のように、新たに再生するために穏やかな気持ちで入浴し、英気を養うことが出来ますように。そして最近台湾で被災された方々にもどうか1日も早く、日常が戻るよう祈っています。