第2話 問題編・後編

文字数 1,183文字

――同日 午前二時二十五分 警察署内
あの……まだ、家帰れないんスか。

(あ、いたいた。あの子が茂部ちゃんかしら?

写真と服が一緒だし、きっとそうね)

黒鵜ちゃん、黒鵜ちゃん!

ほら、あそこ。見なさいよ。やっぱりイケメンじゃない!

警部、お願いですから、口を閉じてもらえませんか。永遠に。

んもう、怒りっぽくて嫌ねえ。

黒鵜ちゃん、更年期障害なんじゃないの?

茂部を見てみなさいよ。お肌もつるつるで、さすが二十歳よね。

ヒゲ剃り跡が青くないって、うらやましいわ~!

剃り跡は、ヒゲの太さが原因なので、年齢は関係ありません。

そして自分はまだ二十代です。

わかってるわよ! でも若いって、それだけで憎たらしいわー。

早くオッサンになる呪いでもかけてやりたい!

自分がオッサンになる頃には、警部はもうおじいさんでしょうね。
……本当に呪いかけてやろうかしら。
そんなことより警部、茂部に話が聞きたいって言ったのはあなたでしょう?

わかってるわよう。

ちょっとした部下とのコミュニケーションじゃない。

(まあ、冗談はこのくらいにして……お仕事しなきゃね!)

こんばんわー。茂部さんよね?

疲れてるところ申し訳ないんだけど、ちょっとだけ、お話聞かせてもらって良いかしら?

……え、誰!? オカマ?!

オカマじゃなくて、オ・ネ・エ。

もとい、尾根です。これでも警部よ? よろしくねん♪

は、はあ……。
早速だけれど、誘拐された時の様子を教えてもらえるかしら?
えっと……つっても、オレ、家を出てすぐに、なんか変な車が後つけて来てて……。
ちょっと待って。それは何日のこと?
え? き、金曜だったけど……。
金曜というと、九月十日ね。
(つまり、母親に目撃された直後にさらわれたってことね)
わかったわ。続けてちょうだい。
そんで、車が横を通り過ぎたと思ったら、いきなりドアが空いて、布みたいなの押し付けられて……。
気づいたら、倉庫みたいなところにいて……。
つまり、犯人たちの姿は見てないってこと?
何回か食事持ってきてたりしてたけど、覆面被ってたし、顔とかは全然……。
ちなみに、食事のときは拘束を解いてもらえたのかしら。
一応、メシとトイレの時だけは……でも、用事が終わったら、すぐにまた縛られてた。
(……うーん。これ以上聞いても、有力な情報は出てこなそうね……)
――警部、そろそろ時間が……。
そうね。ご協力ありがとうございました。

それでは失礼しますね。

――さ、黒鵜ちゃんも行くわよ。

はい。
――同日 深夜三時 警察署内廊下
被害者は見つかりましたが……結局犯人の手がかりらしきものはありませんでしたね。

ふふーん。

まだまだね、黒鵜ちゃん!

はい?
少なくとも、犯人の一人はこれでわかったじゃない!
……え?!

これは狂言誘拐よ。

黒鵜ちゃん、茂部の交友関係、調べておいてもらえる?

Question!

――いったい尾根はどうして、狂言誘拐だと気づいたのでしょう。



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登場人物紹介

尾根警部。

通称オネエ刑事。体は男だが、心は乙女。


黒鵜警部補。

尾根の部下。優秀だがドSで口が悪い。

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