第1話
文字数 648文字
ありていに言って、彼女はとち狂っていたと思う。
「その恰好は何なの?」
僕は彼女にそう尋ねる。彼女はセーラー服の上に、天使の翼を背負っている。セーラー服は学校指定の制服だから、なんの問題もない。問題は、背中に背負っている作り物の翼の方だ。その翼は発泡スチロールをつなぎ合わせてできていた。
「最近、翼が生え変わらないの」
彼女は少し恥ずかしそうにそう答えた。最近生理が遅いの、と言うように。
彼女と時間を過ごして、分かったことがいくつかある。
彼女が翼をつけるのは、放課後の時間だけ。教室で授業を受けている間、彼女はどこにでもいる普通の女の子だ。あくびをしたり、毛先をいじったりしながら、退屈そうに授業を受ける。髪は栗色のボブカットで、彼女にとても良く似合っている。
彼女の翼は、校舎の三階の空き教室に隠してある。放課後、部活の騒がしい声が響く時間になると、彼女は空き教室に忍び込む。掃除用具入れの裏から翼を取り出して、リュックサックを背負うようにしていそいそと身に着ける。それからやることは、日によってまちまちだった。本を読んだり、宿題をやったり、ぼんやりと窓の外を眺めて過ごすこともあった。
一度だけ、彼女の翼を背負わせてもらったことがある。翼の長さは、ちょうど両手を広げたくらいだった。その重さはほとんどなく、むしろ翼を背負っている方が身軽に感じられた。背中を軽く動かしてみると、発泡スチロールでできた羽根の一枚がぽとりと床に落ちた。
ボンドでくっつけただけなの、と彼女は困ったように言った。
「その恰好は何なの?」
僕は彼女にそう尋ねる。彼女はセーラー服の上に、天使の翼を背負っている。セーラー服は学校指定の制服だから、なんの問題もない。問題は、背中に背負っている作り物の翼の方だ。その翼は発泡スチロールをつなぎ合わせてできていた。
「最近、翼が生え変わらないの」
彼女は少し恥ずかしそうにそう答えた。最近生理が遅いの、と言うように。
彼女と時間を過ごして、分かったことがいくつかある。
彼女が翼をつけるのは、放課後の時間だけ。教室で授業を受けている間、彼女はどこにでもいる普通の女の子だ。あくびをしたり、毛先をいじったりしながら、退屈そうに授業を受ける。髪は栗色のボブカットで、彼女にとても良く似合っている。
彼女の翼は、校舎の三階の空き教室に隠してある。放課後、部活の騒がしい声が響く時間になると、彼女は空き教室に忍び込む。掃除用具入れの裏から翼を取り出して、リュックサックを背負うようにしていそいそと身に着ける。それからやることは、日によってまちまちだった。本を読んだり、宿題をやったり、ぼんやりと窓の外を眺めて過ごすこともあった。
一度だけ、彼女の翼を背負わせてもらったことがある。翼の長さは、ちょうど両手を広げたくらいだった。その重さはほとんどなく、むしろ翼を背負っている方が身軽に感じられた。背中を軽く動かしてみると、発泡スチロールでできた羽根の一枚がぽとりと床に落ちた。
ボンドでくっつけただけなの、と彼女は困ったように言った。