第3話 ねこ

文字数 1,777文字

 俺、霧雲 晴太は会社での疲れをとるために、急いで家に帰っている。

 「ただいまー」
 そう言いながら玄関を開ける、するとそこには、猫耳を付けた雨沙の姿があった。
 「お帰りにゃ!」
 猫の手をしながら、にゃんにゃんと両手を交互に上げ下げしている。
 これはもう確定だ、今週のあの現象は猫、猫化だ。

 「先にお風呂入ってきてほしいにゃ!」
 そう言いながらリビングの方に歩いて行く雨沙。
 そんな雨沙の後ろ姿を見ていると、尻尾が生えていた、再現度高いなー! そんな風に思いながら疲れを取るためにお風呂に入っていく。

 お風呂から上がり、リビングに向かうと、いつも通り美味しそうなご飯が机に並んでいた。
 床に座り雨沙が座るのを待っていると、台所の方から、雨沙が歩いてくる。
 「今日はいつもよりも気持ちを込めて作ってみたにゃ! だからいつもより美味しいと思うはずにゃ!」
 自身ありげに言いながら、俺の隣に座り込む、本当かー? そう思いながらご飯を口に運ぶ、口に入れた途端、何でかはわからないがいつもより美味しく感じられた。
 「いつもより美味しい気がするよ雨沙」
 理由も全くわかってないが、美味しい気がしたのは本当なので、気持ちを言ってみた。
 「いつもと作り方は同じをはずにゃんだけど、まぁいいにゃ晴太が美味しいにゃら、理由なんてなんでもいいにゃ!」
 そうだそうだ! 美味しければ理由なんてなんでもいいんだー! 心の中で叫びながら箸を進めた。

 ご飯を食べ終わると、雨沙が立ち上がりソファの上に座りこっちきてと手招きをする。
 また膝枕してくれのかな? そう考えながらソファの上に座ると。
 「今回は膝枕しないにゃよ」
 心の中を見透かされてる! 一瞬びっくりしたがまぁこんだけ長く一緒にいれば、見透かされても不思議じゃないよなそう思いながら、質問をする。
 「じゃあ何してくれるの?」
 「今日は私もうにゃにもしないにゃ!」
 さっきの見透かされた時よりもびっくりしてしまい、思わず声を出してしまう。
 「ええー! どっか体悪いの!? それとも精神的にきてるとか?」
 今まで1度もこんなことはなかったので、大慌てになってしまった。
 落ち着いたのを見計らって雨沙が喋り出す。
 「違うにゃ、とりあえず座っててほしいにゃ」
 座っててってさっきからずっと座ってるけどな、そんな風に考えながら慌ててた気持ちを、抑えていたら、自分の膝の上にトンと何かが乗っかった。
 「今日は猫だから、私が晴太に甘えるにゃ!」
 雨沙は笑顔で俺の膝に頭を乗せながらにゃんにゃんと言っている。
 なるほどね、そういうことか納得いった、じゃあ猫を撫でるようにしたらいいだよな。
 まず雨沙の頭を撫でながら。
 「気持ちい? これであってるのかな?」
 すると雨沙は本当の猫のように。
 「気持ちいいにゃよ、もっと撫でてほしいにゃ!」
 もっと? 猫って顎らへんも気持ちいいんだっけか?確証はなかったが、とりあえず雨沙の顎の下を撫でてみた、するとまたしても気持ちよさそうに。
 「普段こんなとこ撫でられにゃいから、へんにゃ気分にゃ」
 撫でてる本人でさえ変な感じなのだから、撫でられてる方はもっと変な気持ちだろう。
 「もっと甘えたいにゃ、もっと撫でてほしいにゃ!」
 もっと撫でる? うーんもっとってなると、雨沙の耳元で囁く。
 「もっとってなるとここじゃなくて、寝室の方がいいかも」
 言い終えて雨沙の顔を見ると、赤らめていた、照れていた。
 なにこれ可愛い、逆に照れ臭くなってくる。
 「寝室行く前ににあと1つだけ甘えさせてほしいにゃ」
 照れ隠しなのか、照れが収まったのかはわからなかったが、雨沙が口に指をつけている行動で、あと1つの甘えはすぐにわかった。
 俺の膝に頭をつけている雨沙の唇に、俺の唇を重ねた。
 唇を離し2人で一緒に、寝室に向かった。


 朝、雨沙が俺を起こす声が聞こえる。
 「晴太早く起きて、遅刻しちゃうよ」
 雨沙の声で目を覚まし、急いで支度をして玄関で挨拶をして、家を出る。
 「行ってきまーす」
 「行ってっらっしゃいにゃ」
 あ、と雨沙も思ったのかすぐさま言い直す。
 「行ってっらっしゃい!」
 「うん行ってきます!」
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