第1話 膝枕

文字数 1,586文字

 俺、霧雲晴太《きりぐも せいた》はもの凄く普通の、サラリーマン、収入も高いとは言えない、顔もとてもイケメンとは程遠い顔立ち。
 ただそんな俺には、1つだけ普通じゃないことがある。
 それは、大学の時に付き合って、そのまま結婚した、奥さんが、1週間に1度だけ、男の夢を叶えてくれるという、性格を持っていることだ。


 今日は週の真ん中の水曜日、いつも通り会社でこき使われ、電車に乗り自分の家に帰ってくる。
 「ただいまー」
 そう言いながらドアを、開けるとそこには、奥さんが立っていた。
 エプロン着て、髪を胸ぐらいまで伸ばしている彼女が、俺の奥さん、霧雲雨沙《きりぐも あさ》だ。
 「おかえり」
 雨沙は毎日、笑顔をそう返事をしてくれる、これが、俺が生きていける1つの要因でもある。
 「先お風呂入っちゃって」
 「うん、わかった」
 いつも通りの会話をしながら、お風呂に入って行く。

 お風呂から出てリビングに入って行く。
 リビングには、美味しそうな料理が並んでいる。
 夜ご飯は毎日、雨沙が手作りしてくれている。
 先に机の前に座っていた雨沙が。
 「早く食べちゃおうよ」
 そう急かしてくるので、急いで席に着く。
 その後料理を食べながら、今日会社であった事を話す、これが我が家の日常だ。
 ただ1週間に1回だけ、少しだけいつもとは違くなる。

 料理を食べ終わり、2人同時に。
 「ごちそうさまでした」
 いつもならここで、雨沙が食器を片付け始めるのだが、今日は違った。
 雨沙が立ち上がり、テレビの前にあるソファの上で正座をし始めたすると、雨沙が喋り出した。
 「晴太、こっちきて」
 無表情で言ってくる、なんだろうと思いながらも、言われた通りにソファに行き座った。
 すると、雨沙が雨沙自身の膝をトントンと叩きながら。
 「ここに寝て」
 そう言うと、こっちを早くという目で見てくるので、言われた通り雨沙の膝に頭をつける。
 「これが今週の?」
 雨沙の顔を見ながら質問をする。
 「うん! そうだよこれが、今週の男の夢、膝枕!」
 笑顔で彼女はそう言った。
 そうこれが、自分が毎日生きていける理由の1つ、そして、我が家の1週間に1度だけ起こる変な事。
 その原因は雨沙の男の夢を叶えたいという変な性格のせいだ。
 ただまぁこちらが不利益になることはないので、そんな変な性格も放置している。
 そんな事を考えていると、雨沙が俺の頭を撫でながら。
 「今日もお疲れ様、2人の生活のために、毎日毎日お仕事本当にお疲れ様」
 雨沙は笑顔でそう言ってくれた。
 「こちらこそだよ、毎日会社から帰ると雨沙の笑顔があって、それだけで癒されるのに、毎日美味しい料理まで作ってくれて、まぁ時々だけど、こういうこともしてくれて、ありがとう」
 雨沙の顔見ながら、こんなこと言うのは久しぶりだったので、少し恥ずかしかった。
 すると雨沙が、俺の耳元に顔を近づけて。
 「久しぶりに晴太から、こんなこと聞けて嬉しい! だからこのタイミングで言うね、その内お金が貯まったら、赤ちゃん欲しいな」
 耳元でそんな事を言われると思っていなかったので、顔が赤くなってしまう。
 思わず、雨沙の膝から頭を退けて、一旦頭を冷やす。
 息を整い終わると、雨沙が。
 「もう膝枕いいの?」
 動揺したのを少し笑っているのだろう、ニヤニヤしながら聞いてきた。
 だけどそんな事を気にせずに、俺は。
 「もうちょっと」
 そう言いながら、雨沙の膝に頭を乗せる。
 すると雨沙は。
 「もう晴太可愛い!」
 そう言いながら、雨沙は顔を近づけて、キスをしてきた。
 しばらくすると唇を離し、雨沙は一言。
 「晴太好きだよ」
 それに俺は素直に。
 「俺も好きだよ、雨沙」
 一言そう言った。
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