第1話

文字数 270文字

ああ、この味だ。一口食べると、幼い日から中学生くらいまでの様々な思い出がよみがえってきた。

思いっきり遊びまわって、すっかりおなかをすかせて座った、子供用のいす。ホカホカのご飯の横にたっぷり盛り付けられた筑前煮。甘くて、辛くて、かみしめる満足感。
給食なんてとっくに消化した後、暗くなる寸前までひたすらボールを追いかけた後、どっかり座って、かきこんだ酢豚。

そして、味気ないレトルトや店屋物で過ごした高校時代。
「私、料理得意じゃないんだ。」
 彼女の言葉に、思いっきり首を振る。
 やばい。目の前がかすんで見える。
 舌も、心も思いっきり甘じょっぱい。
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