第6話

文字数 950文字

 そういうわけで、私から見た姉さんは私よりできることも多くて優秀で、いつも私の前にいるような人だった。結局今もその印象は変わらないけどね。
 それでも、昔よりは私も周りを見れるようにもなったし、客観的に物事を見ることも少しはできているはず。だから、昔よりは姉さんのこと完璧な存在だとは思ってないし、昔よりもっと近い位置にいたんだと理解してる。

 ちなみに、母さんから見た姉さんの印象はまたちょっと違った。
姉さんは風邪もひきやすいし、ケガもよくするし要領もよくない子だったらしい。今は取り繕うことを覚えたというか見た目の優等生感もあって要領が悪いようにはパッと見わからないらしいけど、要領がよくなっているわけではないとか。思ってた以上に辛口というか、そこだけ聞くとダメな子にしか聞こえないっていうね。やっぱり妹っていう立場と親の立場とでは見えているものが違うんだなって思った。
 あとは、自分の考えとか思っていることをあまり外にも出さないというか口にすることは多くなかったらしい。普段は本当におとなしいのに時折感情が振り切れるのかぶっ飛んだこともすような人だったらしい。今はそれも鳴りを潜めているけど、まあ今でいう『不思議ちゃん』の片鱗は昔からあったと母さんは言った。

 確かに姉さんは自分の考えていることを口に出しているのはそんなに多く見てない気がする。別に無口なわけでない。何が好きとかこれがおいしいとか日常会話はよくするし。ただ姉さんは傍から見ればボーっとしていることも多い。まるで猫みたいに何もないところを見つめていたり、一般的とは違う考え方とか独特な感性を持ってたり。不思議ちゃんの定義に当てはまるのかは知らないけど独自の世界を持った変わり者であることに間違いないとは思う。

 当の本人としては、そこまでボーっとしてるつもりはないらしいけど、親からも周りの大人からもたまにどこを見てるのかわからないと言われるとはこぼしていた。
 ちなみに不思議ちゃんらしいよと姉に伝えたら、何を言ってるんだこいつみたいな目で見られたのは大変遺憾である。この使い方があってるんだよね、遺憾。
姉に不思議ちゃんという自覚はなかったらしい。今も認めてないけど。
不思議ちゃんっていうのは自覚してないのも含むのかなとちょっと思った。
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