第1話

文字数 1,430文字

 日本人の持つ荷物が増えた気がする。
 私は縁があって、20数年前から全日空の羽田(東京)―庄内(山形)便を利用する機会があった。山形県庄内は羽田から飛行時間1時間弱で着く。意外と近いのだ。便数は1日4往復だが、利用客は結構多い。古いデータだが、庄内発―羽田着路線は、2016年の乗降客数が約36.0万人だった。
 最近、その庄内便で、搭乗して席に着くまでが大変なのだ。機内持ち込み荷物は一人1個に制限されているにもかかわらず、搭乗客の荷物がやたらに多くしかも大きいのだ。収納に手間と時間がかかる。中には自分では荷物が重過ぎて持ち上げられない客もいる。冬期間になると、脱いだコートまでが加わり、荷物棚に全部を収納しきれなくなることもある。キャビンアテンダント(CA)は収納場所の確保に四苦八苦する。
 私はその原因の一つはキャリーバッグではないかと思う。キャスター(車輪)が付いていて、荷物を手で引くだけで、持たないで済む。昔は鞄に荷造りをする際に、手で持って重い時は、中身を選び直して軽く少なくしていた。キャリーバッグではその必要はない。また、空いているスペースがあれば、つい荷物を詰め込んでしまう。
 調べると荷物に関して様々な指摘がある。裕福層は荷物が少ないかほとんど手ぶらである。頭の悪い人、片付けができない人、物事に不安がある人ほど荷物が多い。など諸説いろいろだ。
 しかし、それは昔も今も変わらない。荷物が増えたのは頭の悪い人が増えたからではない。最近、日本人は自分で考えて物事を判断しなくなったからだと、私は思う。
 情報が溢れ返っている。どれが正しい情報か分からない。
 事が起こった。誰にも非難されないよう、マニュアルに忠実に対応する。
 雨が降ったら濡れると困る。傘を持って行こう。
など、あらゆる事態を想定して、準備万端を整えようとする。そのために荷物が増える。
 一方、荷物の少ない人は今、必要な物しか持ち歩かない。万一、想定外の事態に遭遇しても、その場で考え臨機応変に対応する。そして対応できるという自信がある。
 先日、東海道新幹線に乗って車内アナウンスを聞いて驚いた。「自由席の座席、足元には荷物は置かずに、一人でも多くのお客様が座れますようご協力をお願いします。」
 早速、自由席を見に行った。白髪の品のいい中年の女性が通路側の席に座り隣の窓側の空席の足元にキャリーケースを置いていた。座席には鞄と紙袋が置いてあった。アナウンスの内容は本当だった。きっと婦人はキャリーケースが重くて網棚に上げられないのだろう、と推察した。
 荷物が多い、少ないのは個人の自由だ。ただ持ち歩く荷物が多くなって、自分の知っていた日本人の社会人としてのマナーが劣化した?ような気がして残念だった。

 んだの~。

 さて写真は 2020年6月21日に戸塚で撮影した東海道線下り貨物列車である。

 国鉄最強の電気機関車 EF66 が牽引するのはコンテナ貨物である。今は荷物をコンテナに納めて運ぶコンテナ輸送方式が主流となった。貨物ターミナル間を最高速度が 85㎞/h 以上、最速は 110km/hの高速貨物列車で結ぶ。ガッタン、ゴットン…、の世界ではない。ゴーォ という電気機関車の唸りとともに貨物列車が疾走して行く。その迫力に圧倒される。
 同じ荷物でも貨物は規格が統一されたコンテナで効率化が図られた。コンテナにはキャスターは付いてはいないけれどのぉ…。

 んだんだ。
(2023年6月)
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