第3話

文字数 1,024文字

 昼休みになると、購買の前には行列ができる。この学校の生徒の多くが列に並んでいる。僕の隣には同じクラスの友人の中田がいた。彼はスマートフォンを眺めながら列に並んでいる。順番が回ってくると僕はサンドイッチとカレーパンを、中田は揚げパンと焼きそばパンを買った。
 グラウンドの横にあるベンチで、僕らは昼食を食べた。空には太陽が浮かび、穏やかな日の光が降り注いでいた。グラウンドではサッカーをやっている生徒がいた。
「昨日、早見のところに行ったんだろ?」
 焼きそばパンを食べながら、中田は聞いた。
「行ったよ。あまり元気ではなかった」
「残念だよな。成績もよかったけど」
 僕らはベンチに座って、遠くの景色を眺めていた。昨日の早見の様子が浮かんでくる。
「もしかしたら卒業できないんじゃないかって言ってたよ」
「たぶんそうかもな」
 サッカーボールが僕らのところまで転がってきたので、僕はボールを蹴り返した。
「あいつのこと好きだったやつもいたみたいだぜ。でも卒業できないとなると、この先が大変だよな」
 中田はそう言って、焼きそばパンを食べ終え、パックの紅茶を飲んだ。確かに早見のことが好きだという生徒の噂は聞いたことがあった。たまに僕らと早見は一緒にいることが多かったが、彼女は少しだけ人を惹きつけるような魅力があると思っていた。でも特に誰かと付き合っているわけでもなく、普通の高校生活に満足しているようだった。
「そろそろ行くか?」
 中田はそう言って立ち上がる。昼休みはもうじき終わりに近づいていた。僕らはパンの袋をゴミ箱に捨て、教室に戻った。机に座って、本を読んでいると、何人かが僕に話しかけてきた。早見のことを心配している人もいれば興味本位の人もいるような気がした。
 昼休みは終わり、数学の授業が始まった。僕は昨夜あまり眠れなかったので、少しうとうとしながら授業を聞いていた。
「佐々木、これ解いてみろ」
 ふいに先生からそう言われて、僕は現実に引き戻される。積分の簡単な問題だったので、僕は前に立って、問題を解くことができた。僕は少し焦りを感じながらも、席に無事に戻ることができた。
 授業はその後も続いた。僕はまた眠気を感じながら、時間が過ぎていくのを待った。秋の風が窓から吹き込んできて涼しい。この高校に来てからずいぶん経つが、来年卒業となると物寂しい気持ちになる。早見は今どんなことを考えているのだろう。病室の中で、僕と同じように考え事をしていたりするのだろうか。
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