居眠りは魔界への道!?

文字数 1,034文字

さいたま市中央区にある地域密着型スーパー「マラドーナ」

開店直前に道尾は呼び出された。

こんな緊急招集が「緊急ではない」と感じた道尾。

昨日は朝方まで仕事をしていたので、睡眠時間は少ない。

おとといは、日勤から夜勤の連続だったので、立ったまま眠れるくらいだった。

途中の自販機で買ったコーヒーを飲み終えると、事務室へと向かった。
ああ、道尾。おはようさん。
連絡入れても来れるのがお前だけだったんだよ。

お前は「使える」なぁ。
(眠い中でも分かる。「使える」という言葉は人間に対して言う言葉ではないよな……)
眠いだろうけど、倉庫にある荷物を陳列しておいてくれ。
開店時間まであと10分だけど、君ならギリで終わるだろ?

頼むよ! なっ、バイトリーダーくん!
あ……はい。
荷物って何ですか? 念のため聞いてもいいです?
ああ、アレだよ、アレ。お前の得意なヤツ。
飲料系を誤発注しちゃってな! アッハッハッハ!
(笑い事じゃねーじゃんか……)
心で反発するも、態度には出ない。
フリーターであるがゆえ、断れない性格であるがゆえ。

実に17つの業務改善案が道尾にはあった。
当然、それも口から出る事はなく……。
……分かりました。どうにかやってみせますよ!
出るのは店長が好みそうな「元気な声」だけ。
俺は昨日から連勤だから、ちょっと休憩室いるわ。
手に負えないのがあったら、電話してね。
連勤は道尾も同じ事。眠さは道尾の方があるかもしれない。
道尾は倉庫へ走った。その方が好まれるから。

道尾はサービス残業もこなした。道尾はクレーム対応もこなした。
道尾はポップ作成もこました。道尾は店長ができる全ての事をこなせる。

時給は「820円」。埼玉県の最低賃金。


いつからだろう、こんな生活が当たり前になったのは。
いつからだろう、仕事がプライベートを削るようになったのは。
いつからだろう、プライベートに何をすべきが分からないようになったのは。
いつからだろう、健康よりもこのスーパーのために尽くそうと思うようになったのは。
(仕事には余計な考えは必要ないのかもしれない)
マニュアルと、店長からの期待。
そして、道尾自信が創り上げた歪な行動精神。
飲料か、ダンボールで3つは余裕だよな。
刹那。
襲うは強烈な立ちくらみ。
(寝不足だからだか? いや、これくらいいつもの事じゃないか。
 少し……すこしだけ……休もう……)


開店時間まであと十数分というタイミング。
道尾は傍に置いてあったダンボールに横になった。

「寝てはいけない」という思考はなぜかできなかった。
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登場人物紹介

道尾智(みちお さとる)

主人公。埼玉県にある地域密着型スーパー「マラドーナのバイト」19歳のフリーター。
仕事がブラックな事に悩んでいる。そのためか、アイデアだけは持っているも、切り出せずにいる。
魔界の大型雑感店をスーパーだと見なし、昼(ある日は夜も)バイトをしつつ、脱出の計画を練る。
アイデアマンではあるが、あまり言い出せないシャイな性格の持ち主であった。
RPGなどゲームが大好きである。

マラドーナさいたま市中央区店の店長
道尾に無理を言う、ブラック企業の理念に染まった店長。

バラクーダ店長

魔界の大型雑貨店『ダーマル』の店長。
丸いが仕事はできる。喜怒哀楽が激しいが、根は良い魔族。
ソラール族の出身である。

ソング・ミドシラ

道尾の直属の上司にあたる人。
人間に近い「ゲンニ族」出身。
軍曹の様にしごいたつもりが、道尾が堪えなくて驚く。
自他に厳しい。

マヤモさん

夜勤の王。「ヌイ族」出身。
夜勤の事なら全て知っている人。
サボり方も知っている。

魔王トイワ・ホ・ギョウキ

ダーマル・コンツェルンのCEO。
その姿は通信魔法でのみ垣間見える。
とっても偉い。

モブ1

時々出てくる。シャドー族出身である。
ダーマルの雑務を担当している。

モブ2

時々出てくる。シャドー族出身である。
ダーマルの雑務を担当している。

常連客

コノーキ族出身。ダーマルのお得意さん。
クレームを付ける個体も多いが、良い個体も多い。
良くも悪くも、一般的な顧客である。

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