2. ぽっぽろ 市 。

文字数 924文字

        ☆

 ぽっくる島(協和)国の首都である。
 現代官字では『宝歩路(ぽっぽろ)市』と表記されることが多い。
 しかしいまだ諸説は紛糾していて。
 仏教界では『 宝 法 路 』を推しているし、
 海運業界は『 宝 帆 楼 』を推しているし、
 農業関係は『 宝 穂 露 』を推しているし、
 金属業界は『 宝 高 炉(ぽっころ) 』にすべしと言い張って譲らないし、
 鳥類学者は『鳩鳴声(ぽっぽろ)』が可愛いんじゃないかと主張し続けているし。
(そして困ったことに?意外と女性陣からの支持率が高かったりする…)

 そもそも古くは『北方路』だった。
 もともとは、まだ隣島『本日国』の植民領だった頃に。
 区画整理と行政集約の流れから、
北方路村(ぽっぽろむら)』と、
宝庫路街(ほぅころまち)』が、合併することになって。
 人口密度と知名度から優先されて、
宝庫路市(ぽっころし)』となることが、
 ほぼほぼ決まりかけていたのだが。
 占い業界を中心とした信心深い人々から、
 末尾に『コロシ』(殺し)という音が入るのは縁起が悪い、と横槍が入って。
 じゃあ、いっそ『宝庫路都(ぽっころと)』にしたら?
 先住言語的にも意味が良くて、運気アップな感じだし~♪
…と、意見が出て、決まりかけたのだが。
 今度は、往時の支配者たる『本日国』政府から。
 属領のくせに国の要たる『都』の字を使うのはまかりならん。
と、クレームが入った。

 その後、色々あって、なんとか無血不戦のまま、法的な、分離独立は果たしたが…
 その頃には、「もう慣れてるから、現行の『宝歩路(ぽっぽろ)市』のままでいい。」
という意見が、半数近くを占めるようになっていた。
(だって、名刺とか、看板とか、作り直すの面倒くさいしね…?)
 そこから幾度かの住民投票だの全島アンケートだの…を繰り返しながら。
 延々と紛糾し続けている、案件なのである。
(なので現在、役所の公文書のほかは、
「表記は各自で勝手に!」というのが、暗黙の了解になっている…)

       ☆

『広域ぽっぽろ圏』と呼ばれる近隣地域も含めると、人口200万超を数える。
 海浜と、広大な平野と、大河川と沼沢地と、峻険な雪山を包括する。
 美味しい水と空気に恵まれ、
 春夏秋冬の風光明媚に囲まれた…
 豊かで、賑やかで、広々とした…

 美しい、大都市圏である。

       ☆
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登場人物紹介

美味賜 香子(うまし・かこ)。

『なかなか芽の出ない作者の卵』…から、

やっと孵卵器に入った。くらいのところ…??


商業デビュー作:『だがしかしおかしいはなし』


めがヒット作:『 ウマシカ先生 』シリーズ。


佐藤 和子。

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