第1話

文字数 1,023文字

 山形県庄内町の人口減少が止まらない。
 令和4年3月31日現在の庄内町の人口は 20,157人で、平成27年の国勢調査から7年間に約 7.0%の 1,509人が減った。(庄内町公式ホームページから引用した)
 確かに庄内町の人口減少を肌で感じる時はある。
 庄内町には呑み屋街、繁華街はない。夜の街中で人に逢うことが少なくなった。いつも緊急事態宣言が発出されているのでは?と勘違いしたくなる。
 飲んだ時に利用する運転代行会社の保有する車の台数が減った。そもそも運転代行会社の数も減った。タクシー会社の営業時間の終わりが早くなった。閉店や経営者が変わった飲食店をあちらこちらで見掛ける。良い、悪いの問題ではない。皆、時代の流れに一生懸命頑張って対応しているのだ。
 そんな中で、私が行きつけの居酒屋は変わらない。カウンター席に座ると(´▽`) ホッとする。写真は 2016年2月16日に撮影した(あじ)フライである。

 当院で2か月間の僻地(へきち)研修を終える研修医を行きつけの居酒屋に連れて行った。事前に食べたいものを尋ねたところ、「僕は鰺フライが大好きなんです」とのことだった。そこで(あらかじ)め大将に鰺フライをお願いしておいた。「研修医が庄内の思い出に残るような『特製鰺フライ』をお願いします」と。
 出てきた鰺フライを見て、そして食べて研修医は感嘆の声を上げた。「肉厚でこんな大きな鰺フライは食べたことがない!」「そして鰺の骨が揚げてあって、これがカリカリとまた美味しい!」
 大将はこの日のために市場で特別に鰺を見繕(みつくろ)ってくれたのだそうだ。謝謝。

 去る2022年11月、その居酒屋の店内に「11月24日(木)は臨時休業します」という張り紙があった。前々日の22日(火)の夜、カウンター席で飲んでいた時に、大将の手の空いた時を見計らって尋ねてみた。
 「大将、24日は何かおめでたいことでもあるんですか?」
 「ん? あっ、臨時休業のことね。めでたいことなんかとんでもない。働き手のバイトがいないんですよ。」
 「えっ!?」
 その居酒屋は大将が一人で(まかな)いをし、それを2~3人の従業員が配膳、下膳、会計、食器洗いなどを手伝っている。その働き手が集まらないのだそうだ。
 「(隣の)酒田(市)や鶴岡(市)にも求人を出しても、こんな庄内町には誰も来ませんよ、今時(いまどき)…。」
 大将は自嘲的に言った。
 人口が減るということの現実を目の当たりにした瞬間だった。
 寂しいの。

 んだ。
(2022年12月)
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