トロピカル・サンセット
文字数 865文字
オレンジ色に染まる水平線……美しい海が星空と溶け合うようにグラディエーションを描いている。
夕凪の瞬間(とき)、時間さえも止まって、僕等のこの瞬間は永遠に続くかのよう。
僕の目には彼女しか映らない、そして僕が見つめる彼女の青い瞳にも僕しか映っていない。
僕は僕の全てを彼女に捧げても惜しくない、そして、彼女の一点の曇りもない笑顔は、彼女も僕と同じ気持ちなのだと教えてくれる。
今、正に沈もうとしている夕日、そのオレンジ色の輝きの中で僕らは手に手を取って永遠の愛を誓っていた……それなのに……。
突然、僕らは引き裂かれた。
美しく、完璧に調和が取れた風景、そこに流れる穏やかな時間、通い合う愛……その全てが一瞬にしてばらばらに切り離されて真っ暗な箱の中に閉じ込められたのだ。
暗闇の中、僕は彼女を探した。
しかし、僕の手に触れるのは風にそよぐ椰子の葉、穏やかに打ち寄せては返す波、赤く染まった水面、そんなものばかり……彼女を見つけようにも意地の悪い暗闇に阻まれてしまった……。
あれからどれだけの時が流れたのだろう……絶望の中、あきらめかけていた僕に希望が差し込んだ。
箱が揺らされている……偶然に頼るしかないのが情けないが、もし彼女に触れることが出来たなら……僕はきっと彼女を手放したりはしない、その手を固く握り締めてどこにも行かせやしない……。
ああ、愛しい女性(ひと)……君は今どこにいるんだい?
「わぁ! 綺麗、ばらばらだけど、どのピースも綺麗な色ね!」
「お前にはまだちょっと難しいかも知れないな、大丈夫かい?」
「うん、あたし、頑張る! ありがとう、パパ!」
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ああ、君だけが頼りだ、もう一度僕らを逢わせておくれ、そして愛の瞬間を永遠に……。