開拓者シューマ

文字数 2,296文字

ついてきて
っはい。
建物の中に入るとガラムさんが促してくる。

しかしシューマは内装が気になって仕方がない。

入ってすぐに左の空間と右の空間に分かれ、左側は受付窓口とおぼしきカウンターが小さく間仕切りで分けられその前に武装をまとった人たちが並んでいる。場合によっては3人ほどのグループで並んでいるような人もいる。

右側は酒場兼、食事処、兼情報の交換場所のような風情があった。

ただ騒いでいる人や静かに食事をとっている人、額を寄せ合ってないしょ話をしている人等、さまざまだ。

その奥には壁一面に質の悪そうな茶色の紙が所狭しと張られている。

よく見ると見たこともない記号ばかりだったが、なぜかその意味は理解できた。

異世界言語も理解可能らしい。助かった。

おいあれ。
ああ。「教導」のガラムさんだ……!
ざわっとざわつく協会入り口付近の空間。


ん?
隣の奴はここいらじゃ見たことがないな。装備から言うと新人か。
ガラムさんが連れてきたって事は将来有望なやつなのか……?


ん~。
シューマは視線を感じるが害はなさそうなので気にしないよう努める。
気にする必要はない。初めての人間が来たらたいてい注目の的になるものさ。
(ガラムさんがいるからという可能性もありそうだけどね)
そうしてカウンターの列に並び、順番を待った。
ようこそいらっしゃいました!新人の方ですね!ご登録を開始したいのですがよろしいでしょうか?
順番がきてすぐ、話はトントン拍子に進んでいった。

個人情報、来歴、証明、その全てが提出済みという事らしい。

シューマは身に覚えがなかったが、そういうものなのかと受け入れた。

異世界なんて何が本当で何が嘘かなんて判断がつかない。ありのままを受け入れよう。

ありがとうございます。

それではこれがあなたの協会証ということになります。

あなたがもし魔物を倒したのならば、この協会証に記録され、あなたがもし何かを開拓することができたのならばそれもまたこの協会証に記録されます。

そしてわれわれはその成果に対して報酬を支払う用意があります。

よい開拓をよろしくお願いします。

はいっ!頑張ります!
シューマさんは新人なのでランクFからのスタートとなります。

ランクは細かく分かれておりますが、それもすべて己の力量以上の依頼をすることがないようにとの配慮です。

開拓者を志す方々はたくさんいらっしゃいます。ですが開拓者を続けられる人は限られています。その限られた人々が間違いであっても命を散らすことがあっては都市の大きな損失となります。

なのでランク設定により依頼の制限をかけさせていただいております。

シューマさんの場合FランクなのでFランクの依頼全てとEランク下位の依頼が受けられます。

そしてその成果が協会証に記録され、協会によりランク上昇の判断をされた場合にのみ上のランク上がることができます。

突発的な成功で急速にランクが上がらないようどんな大きな成功であっても1段飛ばしのランク上昇はありません。

シューマさんも上を目指すのであれば、確かな成果を数多く蓄積することが1番の近道だと思います。

こつこつ貯めるのは得意です!
ふふふ。なら大丈夫ですね。安全第一、命を大事に。その気持ちは忘れないでいてください。


はいっ!
新人はいくらでも生えてくるから死んでも誰も困らないぞー!ハハハハハ!
シューマに向けやじが飛ぶ。

カウンターに並んでいるシューマの事を、ニヤニヤと無遠慮に見てくるがらの悪そうな人達がたむろっていた。

予想外なことに装備はなかなかに高級品で揃っているように見えた。金属鎧なんかは装飾のレベルが皮鎧とは隔絶している。だが肝心の装備者の表情や態度、立ち居振る舞いにマイナス点が多く、上級者には見えずどこか荒んでいる騎士崩れのように見えた。

あー。
ここで何か機転をきかせて面白いセリフでも言えたら大団円なのだろうが、シューマにそのような経験値は無い。

普通に言い返すこともできずただ呻く事になった。

気にするな。CランクになれないDランク上位≪セミプロ≫だ。

シューマならきっと追い越せるさ。

ーーー! っち!
気分を害したのだろうか、もうシューマのほうは見向きもせずまだ午前中なのに酒らしきものをあおった。


(しかしその無条件の信頼なんなんですかね!プレッシャーですよ!逆パワハラですかっ!)
開拓者同士の揉め事は極力控えてくださいね
は~い。
もちろんするつもりなど無い。
ありがとうございます!

では協会証をどうぞ。

開拓者シューマさんの誕生をお祝いします!

これが僕の協会証……!

ありがとうございますっ!

第一歩だな。
協会証は手のひらサイズの鉄のプレートで、上のほうに穴が開いており、そこからほとんど重さを感じないチェーンが伸びる。首にかけるようらしい。

これを提出すればいろいろなところに利用できるらしい。

偽造や他人のなりすましが怖いなと思ったが。

それは大丈夫です。開拓者の認証は、血液認証よりも上の情報量をもつ波動認証です。

その人の存在の力といっても過言ではありません。魂の力ともいいます。

同じものなど一つもありません。

さらにその存在の力を記録することで装備者の成長や体調、現在の状況を把握することができます。

もちろん個人情報により私たちは閲覧いたしません。

どうぞ安心してご利用ください。

依頼はランクで選ぶ方法と予想波動必要値で選ぶ方法がある。

その人の実力を表すわけではないが、それくらいは無いと危ないという目安にもなっている。

頭に入れておくだけ入れておいてほしい。

了解ですっ!
じゃあ明日の依頼を予約しておこうか。
そうしてシューマとガラムは協会内に設置されている巨大依頼板の方へ向かった。
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登場人物紹介

シューマ

三十歳。若返って18歳になっている。
地味に細マッチョになっており鏡を見るのが癖になり始めている
うだつの上がらない会社員だった
童貞
異世界に召喚される
バフ魔法とデバフ魔法を使えるようになる。

フェリル

15歳
犬耳娘
物理的に暴走してしまう性質を持っている
その症状をシューマが緩和できるようだが……?

エムペドクレス

???歳
魔女
召喚主
めっちゃ強い

ガラム

30歳
前線都市グランフロントの防衛騎士≪シュバリエガード≫東部支部隊長
シューマを助け後見人になってくれたイケメン。普通にいい人。

エディ

28歳
男A
元底辺開拓者
シューマのパーティに入り、能力が強化されてわが世の春を謳歌しようとしている。
肉体年齢は年下のシューマをアニキと呼ぶ。
技術の鍛錬に余念がない

ブラームス

27歳
男B
元底辺開拓者
シューマとパーティを組んだことで自分の将来が開けたように思えている
年下のシューマをアニキと呼ぶ
計画をたてることや、状況を設定するのが好き。自分が前に出るよりサポートをしたい派。

クラーク

26歳
男C
元底辺開拓者
才能が開花せず、くすぶっていたがシューマのパーティーに入ったことで本当の自分を見つけた。
年下のシューマをアニキと呼ぶ
筋トレ魔

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