■『地球人ガイド』(10)叡智召喚(11)ゲンチ(12)ギルド(13)パーティ

文字数 7,062文字

■『地球人ガイド』(10)叡智召喚、(11)ゲンチの国家と言語と暦、(12)ギルド、(13)パーティ
※NOVEL DAYSの仕様による制限のため、サブタイトルを縮めさせていただきましたが、本来のサブタイトルは上記になります。



(10)叡智召喚

 皆さんをゲンチへと召喚したのは<叡智召喚>という「魔力階位7」に存在する魔法です。
 地球人ギルドでは、召喚された方々に様々な記憶を呼び覚ましていただき、以下のような共通点があることを確認してます。

・<叡智召喚>は「召喚者が求めているモノを持つ者を異世界より召喚する」らしいが、地球人以外が召喚されたという話は聞いたことがない
・召喚されるのは精神と肉体のみで、義足・入れ歯・ペースメーカー・豊胸シリコン等は召喚されない
・召喚直前の最後の記憶は「一人でいたこと」のみが一致しており、トラックにはねられたり、過労死したりなど死亡の記憶はない
・地球で「自分の居場所がない」と感じていた
・召喚されたとき、事故や病気で失っていた身体部位が再生していた
・年齢はそのままで、肉体が若返ったりはしていない様子
・地球人でも「魔力階位7」まで魔力階位を上げると<叡智召喚>が使用可能になった
・地球人の発動した<叡智召喚>でも地球人が召喚される

 どうやら、地球へ送り返す魔法もあるようですが、その送還の際に、対象者は魔力と記憶とが失われると言われています。
 送還後に再召喚された地球人は今のところ記録がないのと、地球での記憶においてゲンチの話題を聞いたことのある人がいないのとで、確かめる術はまだありません。





(11)ゲンチの国家と言語と暦

 ゲンチには現在、歴史ある7つの大国が存在します。
 それぞれの国には異なる言語を持つ人間の民族が住んでいますが、約五百年以上前にあった「魔王」との大戦以降は、共通歴と共通語が作られ、一般的な暦と会話はこれらを用いることが多いです。


・共通語
 共通語は、本来使用している言語を、「魔力身分証」の魔力を用いて変換されています。
 なので「魔力身分証」を入手すれば自動的に、ゲンチ人との会話が可能になります。
 この自動翻訳は文字についても適用されますが、変換前の言語にあって、変換後の言語にない言葉については、微妙にニュアンスがズレて伝わることもあるのでご注意ください。

 ちなみに、この地球人ガイドは、「魔力身分証」を入手前でも読むことができるよう、日本語で書かれております。
 なぜ日本語なのかについては、後述いたします。


・共通歴
 共通歴は、ゲンチにて広く信仰されているコル様、コーパス様とその子供神様たちに深い関わりがある暦です。
 ゲンチの一日の長さは地球とだいたい同じです。
 地球人が持ち込んだ地球の時間概念が一部、採用されています。
 秒、分、時、日までは地球と一緒です。
 ただ、一週間が八日間であり、一ヶ月は六週、一年は八ヶ月というところが地球とは異なります。

 曜日と月の順番は、天空、風、土、火、水、闇、光、大地、となっております。

 通常の一ヶ月は四十八日間ですが、
 一年の最初の月(天空月)は、第一週全曜日と、第二週最初の天空曜日が、
 一年の最後の月(大地月)は、第五週最後の大地曜日と、第六週全曜日とが、ありません。
 ゲンチの方々の説明によると、「新しい年に生まれ変わるために神様が手を貸しているから不在」とのことです。

 ゲンチの方々は、十六歳で成人を迎えると、自分が信仰する神様を本格的に選択するようです。
 自分の生まれ曜日の神様を信仰することが多いようです。

 属性には反対属性がありますが、これは属性を司る神様同士についても影響を及ぼしております。
 成人で神様を選ぶとき、自分の生まれ曜日とは異なる属性の神様を選ぶことはあっても、反対属性の神様を選ぶことはありませんし、地球では日曜日が安息日でしたが、ゲンチでは信仰する神様の反対属性の曜日が安息日となっております。


● ゲンチの七大国
 七大国とは、共通語と共通歴とが通じる人間国家の総称です。

 ゲンチに召喚された地球人の多くは召喚された地に馴染み、ゲンチ人と結婚する人も少なくありません。
 そのことが叡智召喚に影響を及ぼしているのかどうかはわかりませんが、ゲンチの各地域で召喚される人種はその土地毎に偏りがあると言われております。

 では北の地方から順に説明させていただきます。

・カラリエーフストヴァ王国
 七大国北部の人間国家です。召喚された地球人としてはスラヴ系が多いです。
 カラリエーフストヴァ王国は、巨人国家やドワーフ国家と交流があります。

・ワングワ帝国
 七大国の北東部にある人間国家です。召喚された地球人としては中華系が多いです。
 幾つもの鬼人族と接しており、ワングワの長城と呼ばれる長い城壁を築いていることでも有名です。

・アフトクラトラス帝国
 七大国の北西部にある人間国家です。召喚された地球人としてはラテン系・ゲルマン系が多いです。
 アフトクラトラス帝国の北方・西方には古代遺跡が多く、アンデッドモンスターやゴーレムが多数出没します。

・オウコク王国
 七大国の中央部にある人間国家です。召喚された地球人としては東アジア系、とりわけ日本人が多いです。
 この地球人ガイドをご覧のあなたも、恐らくはこのオウコク王国へ召喚された方だと思います。

・イーシャ王国
 七大国南東部にある人間国家です。召喚された地球人としては南アジアから東南アジア系、とりわけインド人が多いです。
 イーシャ王国は幾つかの獣人国家と交流があります。

・マムラカ王国連合
 七大国南西部にある人間小国家郡で、連合内で持ち回りで議長を選出しております。召喚された地球人としてはアラブ・エジプト系が多いです。
 砂漠が多く、竜人国家と交流があります。

・ウハールメ王国
 七大国南部にある人間国家です。召喚された地球人としてはアフリカ系が多いです。
 恐竜牧場を多く擁し、エルフ国家との交流もあります。





(12)ギルド

 ゲンチにおける「ギルド」とは一般に公式ギルドのことを指します。
 公式ギルドとは、七大国により公認された公的機関であり、それらに加入することで、本人の魔力の有無に限らず「魔力身分証」を確認できるようになります。
 加入している公式ギルドについては、「魔力身分証」の「刻印」欄に記されます。

 加入方法は、各ギルドの本部もしくは支部において、『公式珠(コア)』と呼ばれる魔法具に触れ、承認されることです。
 『公式珠』は、七大国共同にて管理されており、私たちの地球人ギルドも『公式珠』の貸与を受けております。

 以下に主な公式ギルドをご紹介いたします。


● 公式ギルド

・国家ギルド
 その国にて生を受けた人が原則加入するギルドです。
 私たちの住むオウコク王国では、オウコクギルドと呼ばれています。
 加入している間は「刻印」に<(国名)>と記載されます。ここオウコク王国においては<オウコク>と記載されます。
 他の国家ギルドからの移住者は、この国家ギルドについて移住先で加入替えもできるようです。
 手続きは国民省直営事務所にて行なえます。

・地球人ギルド
 地球より召喚された地球人が原則加入するギルドです。
 地球人はゲンチに召喚され、様々な知識や技術をもたらした功績として、税金が安く設定されております。
 ただし、地球人同士から生まれた子供についても国家ギルドへの登録が義務付けられています。未成年の親のどちらもが子供と同じ国家ギルドに所属していない場合、その子供は移民扱いとなってしまうため、ゲンチ人と結婚する際に国家ギルドへの加入替えを行う方も少なくありません。
 加入している間は「刻印」に<地球人>と記載されます。
 手続きは地球人ギルドにて行なえます。
 地球人ギルドは二十四時間、受付を開けております。

・神様ギルド
 一般には、コル様ギルド、コーパス様ギルド……ルクス様ギルド、と各神様のお名前がつけられたギルド名を用います。
 各教派の信者が加入しております。神様ギルドというのは総称です。
 神様ギルドの加入者は、各教派の神殿にて、一定の「お勤め」を行うことで宿や食事を提供していただけます。
 このため、平民は、生まれて間もなく、親の進行する教派に加入させられるのが普通です。緊急時の避難先として神様ギルドが受け入れるのは、教派の信徒のみだからです。
 ゲンチ人は十六歳になると「成人の儀」という信仰する教派を確定する儀式があります。
 未成年時代を見守っていただいた神様をそのまま信仰する場合と、就きたい職業に有利な加護を持つ神様の教派を選ぶ場合とがあり、後者のような加入替えも珍しい話ではありません。
 ゲンチにおいても地球の神を信仰する者は少なくありませんが、地球神における公式ギルドは存在いたしません。
 加入している間は「刻印」に<(神様名)の使徒>と記載されます。
 手続きは、各教派の神殿にて行なえます。

・宮廷ギルド
 一つの国家について、地球でいう公務員が加入するギルドとなります。
 加入している間は「刻印」に<(国名)宮廷>と記載されます。ここオウコク王国においては<オウコク宮廷>と記載されます。
 手続きは、宮廷側から召し抱えられた者にのみ許可されます。

・冒険者ギルド
 犯罪履歴がなく、「魔力身分証」を持つ者であれば、任意加入が認められています。
 ギルド要請に応じることを条件に、町への出入りや通行税などが優遇されます。
 また、モンスターや犯罪者の死体を換金できるのも冒険者ギルド加入者のみとなっております。
 加入している間は「刻印」に<冒険者>と記載されます。
 手続きは冒険者ギルドにて行なえます。

・銀行ギルド
 ゲンチにおける銀行は、各国毎に唯一にして国営銀行となります。地球の銀行同様に資産を預かってもらえます。
 預金に対する利子はつきませんが、荷物にもなる大量の貨幣を持ち歩かずに済むのは、旅に危険がつきまとうゲンチではとても価値のあることと認識されています。
 国家ギルド、もしくは地球人ギルドに加入し、なおかつ犯罪履歴がない者だけが加入できます。
 一度どこかの銀行ギルドに登録すれば、七大国内であれば別のどの町でも預金・引き出しが可能になります。オウコク銀行で預けたお金を他国の銀行で引き出すことも可能です。
 ゲンチの貨幣は信用貨幣ではなく本位貨幣になります。貨幣内の金属含有量は国家間で統一されており、為替レートは存在しません。
 ただし、高額の引き出しについては、事前申告が必要となります。また、預金・引き出しが別都市となる場合、高額引き出しには制限がかかることもあります。
 また、銀行ギルド加入者同士が同時に同じ銀行ギルドを訪れた場合、口座間送金も可能です。
 加入している間は「刻印」に<銀行>と記載されます。
 手続きは、銀行ギルドにて行なえます。

・貴族ギルド
 貴族階級のうち、大貴族、中貴族のみが加入できるギルドと言われております。
 加入している間は「刻印」に<(国名)貴族>と記載されます。
 小貴族、準貴族は基本的には貴族ギルドには加入できません。大貴族や中貴族の子女においては後継者以外は小貴族となる扱いです。そういった小貴族に対し、貴族ギルドに加入していないことを揶揄するような言動は避けてください。
 貴族階級に対する侮辱に対する貴族階級からの報復については、身を守るための防戦であっても正当防衛が認められない事例が非常に多く報告されています。


● 準公式ギルド
 準公式ギルドとは、公的機関ではないものの、『公式珠』の機能縮小版である『準公式珠(デミコア)』を国より支給されたギルドのことを指します。

・家名ギルド
 国より、一定以上の功績を認められた者(通常は、大貴族、中貴族)には『準公式珠』が支給されます。
 他人に名前を名乗るとき、家名まで名乗るのは家名ギルドを所持している家族以外ではあまり見かけません。
 庶民においては、「魔力身分証」にて、家族で個別パーティを組んでいる人々が多いため、姓を持つ必要性を感じていない人が多いです。
 加入している間は「刻印」に<(家名)>と記載されます。

・職業ギルド
 国に対し、一定以上の税金を収めている職業集団に関しては『準公式珠』が支給されます。
 加入している間は「刻印」に<(職業名)>と記載されます。
 職業ギルドに加入するには、その職業に就くだけではなく、その職業にて客や同業者よりある程度の信頼を得なければならないと聞きます。


 『公式珠』および『準公式珠』のみが、公式パーティを組むことができます。
 公式パーティについては次項にて詳しく説明させていただきます。





(13)パーティ

 パーティとは、加入者間において「魔力身分証」を共有できる契約のことを指します。
 パーティには、公式パーティと個別パーティとがあります。

 公式パーティとは、公式ギルド・準公式ギルドに加入することを指します。
 それに対し個別パーティは、魔力を持つ者たちが個人的に作成できます。
 一般に、「パーティを組む」と言うと、個別パーティのことを指します。

 公式パーティは、魔力を持たない者でも加入できるのに対し、個別パーティは魔力を持たない者の加入はできません。

 また、公式パーティは許可される限りいくつでも加入できますが、個別パーティは通常一つにしか入りません。
 なぜかというと、個別のパーティ内通知の送信枠・受信枠がそれぞれ一つしかないからです。
 加入している公式パーティは「刻印」に記載されますが、個別パーティは特に表示されません。


・パーティ内通知
 パーティを組む最大のメリットが、パーティ内通知です。
 文字通り、パーティ加入者に通知を送ることができるのです。
 ゲンチにおいて、技術としては電話や無線は再現できておりますが実用化はされておりませんし、当然、携帯電話もまだ開発されておりません。
 それはパーティ内通知があるからです。
 距離を隔てた相手との通話においてはパーティ内通知が主要な通話手段となります。
 以下に、地球人ガイド制作部が調査したパーティ内通知の仕様を判明範囲で載せておきますのでご参考にどうぞ。

 パーティ内通知は、事前に決定した送信分数に等しい精神を消費し、発声をすると、その発声情報を通知として送信できるものです。
 発声は必須であり、送信側が発声しなかった場合は、受信通知も無言受信となります。
 発信側の周囲の音は送信内容に含まれないようです。

 送信対象は、全員、個人、選別の三種類から選べます。
 選別というのは、個別パーティ内に一つだけ設定できるスイッチのようなもので、個別パーティ主催者が対象人物に触れることでスイッチのオン・オフを再設定できます。
 選別に対してパーティ内通知を行った場合、スイッチがオンになっている相手にのみ送信されます。
 受信側においては、受信した通知が上記三種類のどれで送られたかはわかりません。

 受信側において、受信した通知の再生タイミングは自由で、受信内容は受信者本人にしか聞こえません。
 再生は何度でも可能ですが、二回目移行の再生については、受信分数に等しい精神を消費しなければなりません。

 受信内容は、次に誰かが送信を行った際に上書きされます。受信側が通知を再生したかどうかは送信側にはわかりません。
 留守番電話の録音メッセージをイメージしていただければ良いかと思われます。

 パーティ内通知の送信距離は、七大国内で公式ギルドが存在する規模の街の中であれば、どんなに離れていても通じると言われています。街の中にはパーティ内通知を補助する魔法具が設置されているという噂です。
 町から離れた場所では直線距離でおよそ四キロメートルほどという実験結果が届いておりますが、障害物が多い場所では距離が短くなるようです。
 送信内容が受信側に届かなかった場合、送信内容は消失するようですが、送信側は送信失敗に気付けるようです。
 送信前に、送信分数に等しい精神を余分に消費する毎に、送信距離も直線距離でおよそ四キロメートルずつ延伸するようです。

 受信毎に上書きされる受信枠ですが、公式パーティ・準公式パーティであれば、それぞれ別途に一つずつ確保されます。
 個別パーティの場合は、いくつの個別パーティに加入しようとも、受信枠は一つだけとなります。
 個別パーティに複数同時加入する人がほぼいないのは、このパーティ内通知の仕様のせいだと言われています。

※ パーティ内通知用の魔法具
 パーティ内通知はゲンチ人の間でも活用されており、パーティ内通知の補助に特化した魔法具も多く存在します。
 通知音声を魔法具に保存できる魔法具、通知内容を巻物に文字起こしする魔法具、パーティ内通知送信側の発声が周囲に漏れないようにする魔法具などが知られています。


・報酬共有
 個別パーティにはまた報酬共有という機能も有します。
 個別パーティメンバーが殺した相手から得られる魔力経験値を、個別パーティメンバーにて等分する機能です。
 地球人ガイド制作部で実験したところ、端数は切り上げになるようです。

 また、経験値に関して、肉体や精神の値が1点に満たない小さな虫などに関しては、一匹一匹が端数切り上げにはならず、数十、数百、数千という単位でまとめて一定量の経験点が入るようです。
 経験点集めに裏技はないようです。地道に頑張りましょう。

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