異世界の紅玉《ルビィ》
文字数 2,996文字
おお! 自分で自分を「知能指数の高い」とは、なかなか言うじゃないか助手君!
しかし半年前、さえない酒場で「失恋したての君」と出逢った時は驚いたなあ……まさかれっきとした研究者が、このわたしの正体を知って「僕も盗賊になりたいです! どうか弟子にしてください!」なんて言うとは思わなかったよ!
あ~あ、見る人が見れば、この地味な岩にしか見えないまわりの岩もお宝なのに……。「異世界の大地の歴史をひもとく貴重な資料」として、研究のための価値があるのに……。
あ~あ~、ハンマーとツルハシ使ってがんがん岩を砕きにかかるお二人さん……も、もったいな~……。
……あれ? けっこう硬いみたいだね……さっきっから全然岩が削れてないよ~??
……はあ、何とも気の毒なお二人さん……。
……お? お? おおお!? こりゃ何だ、まわりの空気がむらむら歪んで、あっという間に小さな虫の群れがわらわら!
あ~あ、おなかいっぱいになった妖精たち、虹色の嵐みたいに元の世界に消えちゃった……。
そしてお目当ての鉱物は!? ……ああ!? こ、これは!?
……うん、確かに運びやすくはなったねえ……。元の大きさよりどう見ても二回り以上小さくなってるもんねえ……。
なるほど、妖精たちは「地味な岩だけをいただく」とは一言も言っていなかったからなあ! デザートがわりに赤い鉱物もそこそこかじっていっちゃったんだね!
――という訳で、結局二人の盗賊はお宝を盗めなかったんだって。
……ああ、「赤い鉱物」はどうしたかって? どこかの王宮に買い取られて、三日後にはもう金庫から無くなってたって話だよ。まるで「誰かに食べられちゃったみたい」にね!(了)