第1話 12月 復縁することにした

文字数 779文字

 きっかけは息子の足首骨折による手術入院。

 手術が終わって一息ついたときだった。
元夫からの何度目かの復縁(ふくえん)のお願いに、私は(うなず)いていた。暮れの12月の夜7時、大病院の駐車場で(中略)
 今さら別の人と再婚でもして(しないだろうけど)、初見(しょけん)の欠点に疲弊するより、欠点を十分理解している元夫の方が楽だと思ったからだ。

 まあ、はっきり言って疲れていたんだと思う。
復縁が吉と出るのか凶とでるのか、どっちでもいいや、二度目なら余裕だ。
夫もさすがにもう若くないし。問題が発生したらまた離婚すればいい、ノウハウはわかっている。どうせ自分の人生、好きに使う。全部冥途(めいど)土産(みやげ)話だ。

 子どもがかわいそう? 
息子はもう中学生だし私に似てドライである。テレビドラマのようなベタなことは起こらない。起こらないとは言い切れないが、まあ、現実は淡々と進行するものだ。

 それでも復縁をOKしたその晩の湯船の中で、もうこれからは自分1人で全部背負わなくてもいいのだ、実家から出られるのだと思うと、途轍(とてつ)もない開放感が湧き上がり、思わず大きなため息が漏れた。


 そこで3人で住むための、マイホームを建てることにした。
息子は非常に喜んでいた。新しい家に住めるということに対して。やはりドライで助かる。

 土地はもう決まっている。私が相続する予定の、実父所有の土地である。
上に立つ築30年の元貸家を取り壊し、新しい家を建て、私と夫と息子3人で再スタートを切るのだ。

 住宅資金は私が長年コツコツと貯めた自己資金である。
夫に「いくら出せる?」と聞いてみたところ、「無い」と即答されたため。

しかし最終的には、夫から住宅資金の約半分を負担してもらえた。
臨時収入という言い方でいいのだろうか? 夫の父が亡くなり遺産を相続し、それを()ててくれたのだ。

「ありがとう」とそのとき夫にお礼を言ったが、よく考えたら当たり前だよね?

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