第5話 初めての現場
文字数 1,342文字
ついに、舞台裏方として初めての現場仕事日がやってきた。
初現場はクラシックバレエ教室の発表会だった。バレエは7年ほど習っていたので、何となくとっつきやすくて嬉しかった。
前々日くらいから緊張でお腹が重くなりながら、工具の準備をした。
先輩方に教えてもらった「絶対いるものリスト」を、新品の工具袋に詰めていく。
ビニールテープやドライバーなど頻繁に使いそうなものは前ポケットに...などと結構試行錯誤した。
初日は「仕込み」という作業工程の日だ。文字通り、本番で使う照明器具を舞台にセッティングしていく。新人は、セッティングされている大量の照明器具にカラーフィルターを入れる(これによって照明に色がつく)ことが役目のひとつである。直前までド新人なりに全く読めない図面とにらめっこしていた。
ついに迎えた現場入り。一緒の現場に割り振られた同期と2人、集合場所に一番乗りした。
それから続々と先輩方が出勤されてくる。舞台の現場では、別会社の方やフリーランスの照明家さんも一緒に仕事をすることが多く、お名前を覚えるのも一苦労だ。
そろそろ集合時刻という時、照明担当たちの指揮をとる照明デザイナーさんが出勤されてきた。歩いてこられるのが見えた瞬間、すぐに挨拶をしたが、、、
反応がない。
....うわ
.....私なんかやってしまったか??
目の前にきてからもう一度挨拶をしたら「なんでもう一回言うの?」と言われてしまった。
初現場。ただでさえ身体が硬直していた中、そんなちょっとしたお見舞いもをくらった。
入社前にも思ったが、やはり仕事内容自体は思い描いていたとおり。自分のやりたいことそのものだった。ただ現地で思いふけっている暇はなく、ほぼずっと怒られていた。「現場で怒られて覚えなさい」というのは、入社してから何人もの先輩から言われていた。とにかく終始駆け抜けるように慌ただしい雰囲気だ。この後リハーサルと本番が控えているため、仕込みは時間との勝負なのである。現場で実物を触りながら丁寧に教わることはほぼ不可能ということを悟った。
つかの間の休憩中は、【昼ごはんを早食いできる=ベテラン】という謎の方程式を教わった。当然先輩よりものろのろ食べていては気まずいので、必死に食べた。この頃から始まった早食い癖は、今もなかなかなおっていない。
休憩が終わった後は、「シュート」と呼ばれる照明を当てる位置を細かく合わせる作業に入った。
新人が手持ち無沙汰になることはかなり気まずい。いろんな先輩の後をストーカーの如くつけまわした結果、照明器具をいくつか触るチャンスを手に入れた。
慣れない作業中、後ろにいた先輩がとんでもない言葉を口にした。
「首をあげろ!」
「そこ、殺す!」
・・・・・・・・え?
・・・・・・・・くびをあげろ?
・・・・・・・・・コロス??
一瞬、先輩方をつけまわした自分への制裁がきたのかと思った。
固まっている間に、その作業をしている手ははねのけられてしまった。
自分が何を言われていたのかめちゃくちゃ気になるが、リハの時間が迫っていたため、その場では聞けなかった。
ちなみに
首上げとは【照明器具の角度を上へあげる】、
殺すというのは【動かないように固定する】
という意味である。
黒い集団が発するには、いささか強烈なワードだった。
初現場はクラシックバレエ教室の発表会だった。バレエは7年ほど習っていたので、何となくとっつきやすくて嬉しかった。
前々日くらいから緊張でお腹が重くなりながら、工具の準備をした。
先輩方に教えてもらった「絶対いるものリスト」を、新品の工具袋に詰めていく。
ビニールテープやドライバーなど頻繁に使いそうなものは前ポケットに...などと結構試行錯誤した。
初日は「仕込み」という作業工程の日だ。文字通り、本番で使う照明器具を舞台にセッティングしていく。新人は、セッティングされている大量の照明器具にカラーフィルターを入れる(これによって照明に色がつく)ことが役目のひとつである。直前までド新人なりに全く読めない図面とにらめっこしていた。
ついに迎えた現場入り。一緒の現場に割り振られた同期と2人、集合場所に一番乗りした。
それから続々と先輩方が出勤されてくる。舞台の現場では、別会社の方やフリーランスの照明家さんも一緒に仕事をすることが多く、お名前を覚えるのも一苦労だ。
そろそろ集合時刻という時、照明担当たちの指揮をとる照明デザイナーさんが出勤されてきた。歩いてこられるのが見えた瞬間、すぐに挨拶をしたが、、、
反応がない。
....うわ
.....私なんかやってしまったか??
目の前にきてからもう一度挨拶をしたら「なんでもう一回言うの?」と言われてしまった。
初現場。ただでさえ身体が硬直していた中、そんなちょっとしたお見舞いもをくらった。
入社前にも思ったが、やはり仕事内容自体は思い描いていたとおり。自分のやりたいことそのものだった。ただ現地で思いふけっている暇はなく、ほぼずっと怒られていた。「現場で怒られて覚えなさい」というのは、入社してから何人もの先輩から言われていた。とにかく終始駆け抜けるように慌ただしい雰囲気だ。この後リハーサルと本番が控えているため、仕込みは時間との勝負なのである。現場で実物を触りながら丁寧に教わることはほぼ不可能ということを悟った。
つかの間の休憩中は、【昼ごはんを早食いできる=ベテラン】という謎の方程式を教わった。当然先輩よりものろのろ食べていては気まずいので、必死に食べた。この頃から始まった早食い癖は、今もなかなかなおっていない。
休憩が終わった後は、「シュート」と呼ばれる照明を当てる位置を細かく合わせる作業に入った。
新人が手持ち無沙汰になることはかなり気まずい。いろんな先輩の後をストーカーの如くつけまわした結果、照明器具をいくつか触るチャンスを手に入れた。
慣れない作業中、後ろにいた先輩がとんでもない言葉を口にした。
「首をあげろ!」
「そこ、殺す!」
・・・・・・・・え?
・・・・・・・・くびをあげろ?
・・・・・・・・・コロス??
一瞬、先輩方をつけまわした自分への制裁がきたのかと思った。
固まっている間に、その作業をしている手ははねのけられてしまった。
自分が何を言われていたのかめちゃくちゃ気になるが、リハの時間が迫っていたため、その場では聞けなかった。
ちなみに
首上げとは【照明器具の角度を上へあげる】、
殺すというのは【動かないように固定する】
という意味である。
黒い集団が発するには、いささか強烈なワードだった。