第11話

文字数 926文字

 説明会は法経済学部本館(法学部と経済学部の共同利用施設である古びた校舎)のあいている会議室で行われた。コの字型にくるりと設置された机の周りに、ぱらぱらと10人程度の男女が集まった。

 ミスコンの企画運営に関わりたいという人々の属性やいかに、と慄きながら参加してみれば、狭い部室に集まったのは常日頃その辺で見かける有象無象の人々だった。何故かこの大学は白と黒のボーダーのカットソーと灰色のパーカーに遭遇する率が非常に高い。狭い部室の中、人々は心許なさげにウロウロと立ち尽くし、心なしか部屋の中がくすぶって見える。

「みんな、あたしらみたいに少しは華やかな世界に関わろうと思たんかな」
「どうだろう。でもみんなあまり乗り気に見えない気がする」

 ひそひそと囁き合っていると、やがて一人の女性が正面の壇上に登り、声を張り上げた。

「皆さん、お集まりいただいてありがとうございます。イベントの企画に関わらせて頂いています、柏木と申します」

 リクルートスーツのような暗い色のパンツスーツを身につけて背筋がピンと伸びている。つやつやとした黒い髪を後ろで一つにまとめていて、銀縁の眼鏡がいかにも有能な秘書と言った雰囲気を醸し出していた。見た目からして、就活中の3回生だろうか。今の時期にこんなイベントに注力していていいのかしらと他人事ながら心配になってしまう。それにしても、化粧っ気のない見た目と言い、喋り方と言い、凡そ、ミスコンとは縁のない人種に見える。

「メガホン振り回しながら、ミスコンなんて女性蔑視の最たるものだ!ミスコン反対!とか言ってそうな人やのにな」

 美都も同じように感じたのか、ひっそりと囁いてくる。周りの人々も戸惑っているのか、部屋の中が一瞬シン、と静まり返った。しかし、柏木と名乗った女性は沈黙を意に介さず、淡々と続けた。時折誰かがこほん、と咳払いをする音が響く。持参したノートにメモを取っている人もいた。

「えーご存知の通り、わたしたちの大学において今までミスキャンパスコンテストというものが開催されたことはありませんでした。勿論、開催したいという声はちらほらとあったものの、これだけの規模のイベントとなるとその企画運営にも莫大な労力がかかることもあり…」
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