第十一章 ザリガニのつぶやき 3

文字数 1,683文字

 古秩父湾の隆起と地殻変動によって秩父の地下に閉じ込められた地底湖は、武甲山の地底湖と水路で繋がっていて、武甲山の竜神も自由に行き来している。秩父に棲む竜神は1柱だけなのか。もしかしたら太古より秩父の地底湖には竜神の一族が棲んでいるのではないだろうか。

 永遠に発展することは、永遠に破壊し続けることにつながる。森の精、水の精、土の精、自然界の精を削って作る人間の欲望は長続きしない。オゾン層の破壊、二酸化炭素の排出量、地球温暖化などが現在世界規模で取り上げられている。しかし破壊を止めることや元に戻す有効な解決策はみつかっていない。
 いまや東京近郊の一大観光地の一つになった秩父も、開発・破壊してしまえばもう元には戻れない。竜神一族の存続は人類の存続とイコールである。秩父という太古からの神域を大事にしていきたい。秩父の地底湖に潜む巨大な竜神という大きな守護神に守られている秩父の自然を、森を、水を、今も、ずっと未来までも大切に守り続けていかねばならない。
 縄文の昔から続く秩父には、率先して自然を守る運動を提起できる環境がある。古(いにしえ)からの自然信仰に基づいた「武甲山」「竜神」「地底湖」を守り、祭りを継続し未来へつなぐという、地球を荒廃から救うモデル地区としての素地ができている。地道に何かできないだろうか。

 現在、奥秩父の山々には数多くの登山ルートがあり、それを紹介する書籍やネットサイトも数多くある。
山旅旅のサイトでは、「埼玉県南西部に位置する山岳の総称である奥武蔵は、アルプスのような派手さはなく小粒ぞろいなものの、奥ゆかしい山々が立ち並んでいます。日本を代表す名峰とは異なる魅力があり、初心者はもちろん、ベテランからも大人気のエリアです」とあり、「はじめに奥武蔵・秩父エリアはなぜ人気があるのか、魅力を解説します」として
「ベテランから初心者まで楽しめる豊富なコース!
最寄り駅から徒歩で登山口まで行ける山が多数!アクセス良好で東京から日帰り参戦可能!
都会の喧騒を忘れて、静かな登山が楽しめる!」とあり、
「奥武蔵・秩父エリアには低山が多いため初心者に優しい山が多いです。しかし、鎖場があったり沢登りができたりと、上級者も楽しめるコースも多々あるため、自身の実力に応じて多様な登山ができるようになっています」と紹介している。
山と渓谷オンラインでは「何度登っても魅力な秩父・奥武蔵の山に登ろう! 小粒でもいい山揃いでオススメ!」という中で、人気の理由を、「都心から簡単にアクセスでき、駅からハイキングが可能で、冬も含めていつでも登山・ハイキングを楽しめること」とある。
更に、威厳ある三角錐の山容が目を引く、秩父のシンボル武甲山と題して、武甲山を紹介している。「標高1304m、秩父盆地から一気に立ち上がる武甲(ぶこう)山は、この山域の盟主的な存在だ。大正初期から石灰岩採掘が始まり、標高と風貌は痛々しく変化してきているが、残された自然を保全する活動も一部で始まっている。秩父を象徴する名山として、このエリアで初めに訪れてみたい山だ」と紹介されている。
 しかし、山と信仰がかけ離れ、山登りだけが目的になると、富士山のように行き過ぎた登山ブームを生み、山にも人にも弊害が増していく。
 武甲山では同じ轍を踏まないようにしたいものである。

 武甲山には秩父の神体山としての扱いが求められる。埼玉の金鑚神社のようにご神体である神体山を立ち入り禁止にするのは今さらできないし、新たに人の手を加えることは却ってマイナスになると思える。今の姿にしたのも時の流れである。石灰の採掘をやめ、今の姿をそのまま残して神体山とするのが自然ではないだろうか。止める勇気さえあればいいのだから。

 竜神の棲む地底湖も人の手で触れてはならない。調査や工事は不要である。天皇領の古墳と同じような扱いを心がければ、武甲山も地底湖も秩父今宮神社の龍神池もおのずと守るべき対象であるという接し方になるのではないか。

                                 ぶくぶくぶく ◉◉◉
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