【拾壱】電話に出ない奴ら
文字数 1,469文字
それから数日、祐太朗の調査には相変わらず何の進展もなかった。
弓永からの連絡もなく、電話をしても繋がる気配がまったくなかった。
麗子が詩織に憑依してから六日目の夕方、祐太朗はこの日も霊の伝手を辿っては浮遊霊をどやしつけていたが、これといった情報は何ひとつ得られなかった。
時間の流れと調査の進展が反比例している。
「クソッ!」祐太朗は道端にある赤いコーンを思い切り蹴飛ばした。それを見ていた中年女性が怪訝そうに祐太朗を見た。祐太朗がメンチを切ると中年女性は足早に去っていった。
祐太朗は震える手をそのままに息を整えると、弱々しく瞳を閉じた。
突然、電話が鳴った。弓永からだった。
「テメエ、いい加減にしろよ!」電話に出てすぐさま激昂する祐太朗。
「まぁ、落ち着けって。それより――」弓永は自分の調査結果を告げた。祐太朗の唇が震え始める。「ってことだ。ま、急いだほうがいいぜ。これで――」
電話を切る祐太朗――すぐさま走り出す。
走る、走る――息が上がる。
筋肉が悲鳴を上げる。
前のめりで蟹股気味の走り方からは、祐太朗が走り慣れていないことを窺わせる。
走りながら電話を掛ける――繋がらない。
クソッ、舌打ちをしながら足の回転を早めた。
近場の駅に着き電車に飛び乗ると、激しく息を吐きながら、江田東駅へ到着するのを待った。到着するなり電車を飛び出し、キセルせん勢いで改札を飛び出す。
詩織からの情報を頼りに、速水の家を探した。
ようやく速水の家に辿り着いた頃には、祐太朗の息は上がり切っており、膝に手を置いて身体を支えなければ立っていられないような状態だった。
吐き気――唾を飲み込んで耐える。
脚の筋肉が痙攣していた。
再度電話――やはり繋がらない。
祐太朗は早足に速水の部屋の前までいくと唾を飲み込み、祐太朗は速水の部屋のインターホンを何度も、何度も、何度も鳴らした。すぐに速水が現れる。自室だというのに服装は、ノータイである以外は最初に鈴木兄妹の部屋に現れた時とほとんど変わらなかった。
「これから……どこかに、出、出かける、予定……?」
「いえ……、あの、大丈夫ですか?」
手を差し伸べようとする速水を祐太朗は制した。
「明日……日付、時間には、リミットがくる……その前に、どうするか、聞いて……」
「はぁ……それならお電話でも大丈夫でしたのに」
「なら……電話に、出ろ。いいから、部屋に上げさせろ……!」
そういって祐太朗は半ば無理矢理に速水の部屋に上がり込んだ。麗子――詩織はいなかった。何でも、今は買い物に出ているらしい。汗が祐太朗のこめかみを濡らす。
「何か、あったんですか?」
「いいから、そこに座れ」
「わかりました……、何か飲み物は――」
「いらねえよ。さっさとしろ」
速水は祐太朗の向かいに腰掛けた。が、祐太朗は息を切りながら部屋の内装を見回すばかりだ。空虚な部屋。まるで精神病棟の一室のようだった。祐太朗は身を乗り出した。
「で、例の件については、ワイフと話したか?」
が、速水は答えない。祐太朗は顔の右半分を一瞬歪ませた。
「まぁ、いい。話はそれだけじゃない――」
祐太朗は話し始めた――すべてを話し終えると、速水は力なく頷いた。
「わかった……」そう呟く祐太朗の目が、複雑に揺れていた。
弓永からの連絡もなく、電話をしても繋がる気配がまったくなかった。
麗子が詩織に憑依してから六日目の夕方、祐太朗はこの日も霊の伝手を辿っては浮遊霊をどやしつけていたが、これといった情報は何ひとつ得られなかった。
時間の流れと調査の進展が反比例している。
「クソッ!」祐太朗は道端にある赤いコーンを思い切り蹴飛ばした。それを見ていた中年女性が怪訝そうに祐太朗を見た。祐太朗がメンチを切ると中年女性は足早に去っていった。
祐太朗は震える手をそのままに息を整えると、弱々しく瞳を閉じた。
突然、電話が鳴った。弓永からだった。
「テメエ、いい加減にしろよ!」電話に出てすぐさま激昂する祐太朗。
「まぁ、落ち着けって。それより――」弓永は自分の調査結果を告げた。祐太朗の唇が震え始める。「ってことだ。ま、急いだほうがいいぜ。これで――」
電話を切る祐太朗――すぐさま走り出す。
走る、走る――息が上がる。
筋肉が悲鳴を上げる。
前のめりで蟹股気味の走り方からは、祐太朗が走り慣れていないことを窺わせる。
走りながら電話を掛ける――繋がらない。
クソッ、舌打ちをしながら足の回転を早めた。
近場の駅に着き電車に飛び乗ると、激しく息を吐きながら、江田東駅へ到着するのを待った。到着するなり電車を飛び出し、キセルせん勢いで改札を飛び出す。
詩織からの情報を頼りに、速水の家を探した。
ようやく速水の家に辿り着いた頃には、祐太朗の息は上がり切っており、膝に手を置いて身体を支えなければ立っていられないような状態だった。
吐き気――唾を飲み込んで耐える。
脚の筋肉が痙攣していた。
再度電話――やはり繋がらない。
祐太朗は早足に速水の部屋の前までいくと唾を飲み込み、祐太朗は速水の部屋のインターホンを何度も、何度も、何度も鳴らした。すぐに速水が現れる。自室だというのに服装は、ノータイである以外は最初に鈴木兄妹の部屋に現れた時とほとんど変わらなかった。
「これから……どこかに、出、出かける、予定……?」
「いえ……、あの、大丈夫ですか?」
手を差し伸べようとする速水を祐太朗は制した。
「明日……日付、時間には、リミットがくる……その前に、どうするか、聞いて……」
「はぁ……それならお電話でも大丈夫でしたのに」
「なら……電話に、出ろ。いいから、部屋に上げさせろ……!」
そういって祐太朗は半ば無理矢理に速水の部屋に上がり込んだ。麗子――詩織はいなかった。何でも、今は買い物に出ているらしい。汗が祐太朗のこめかみを濡らす。
「何か、あったんですか?」
「いいから、そこに座れ」
「わかりました……、何か飲み物は――」
「いらねえよ。さっさとしろ」
速水は祐太朗の向かいに腰掛けた。が、祐太朗は息を切りながら部屋の内装を見回すばかりだ。空虚な部屋。まるで精神病棟の一室のようだった。祐太朗は身を乗り出した。
「で、例の件については、ワイフと話したか?」
が、速水は答えない。祐太朗は顔の右半分を一瞬歪ませた。
「まぁ、いい。話はそれだけじゃない――」
祐太朗は話し始めた――すべてを話し終えると、速水は力なく頷いた。
「わかった……」そう呟く祐太朗の目が、複雑に揺れていた。