1.はじめまして、おじ神様~初めての○○○~

文字数 2,066文字

私は、幼い頃から魔性のモノに出会ってきた。

私にはそういった、いわゆる魔物というものを惹きつける性質がある。

私の魔力は質が良い?らしい。


こんなの、私にはいらないのに。

魔物を引き寄せる私のことを周囲の人間達は気味悪がった。

――あの子と一緒に居ると呪われるわよ
幼少期からこんなことを言われ続けてきたものだから、友達なんて一人もできやしない。
でもそんな日々も今日でおしまいにするわ
少し前、家の古い書庫でみつけた本。

この本には、願いを叶えてくれる神様を呼ぶ方法が記されていた。

(長年、魔物に悩まされきた私にはわかる。

この本には、特別な力が宿っていると。

きっとこの本の通りに儀式を行えば、神様を呼び出せる……と思う。)

といっても根拠は私の直感でしかない。

うう、なんか自信なくなってきた……いやいや、だとしても
だとしても、ダメだったとしてもしない後悔よりやって後悔だ。




この力がなければ、友達どころか恋人だって……!



待っていて、私の運命の人。

この力を手放すことができたら、必ずみつけてみせるんだから!

えっと、術者の血と女の髪、魔力を帯びた地脈の土……っと、よし!

魔法陣を本の通りに描き、儀式に必要な物を並べていく。

後は、魔方陣の中に入って呪文を唱えるだけだ。

神は七天、魔は下天、狭間の現実の長たるヒト、対価は支払った


…………我、願いあり〜♪

この願い応えるならば、姿を現したまえ〜♪

…………恥ずかしすぎる。

なぜ途中から歌う必要があるのか。

誰かにみられたらもう私、お嫁にいけない。

ええい、こんな恥ずかしい呪文を唱えたのよ。お願い!

神様出てきてください……

魔法陣が光に包まれ、魔法陣の中にいた私は、眩しさに目を閉じた。


―――――

   ――――

      ―――


……何かの気配を感じる。

もしかして、成功したのかしら?!

下手くそすぎるわ!

あいた?!

突然、頭をなにかに叩かれた。


あ、これイケメンだ。


長く人や魔物を遠巻きに観察してきた私の直感が告げている。

運命の人だったりして。


…………目を開けて上を向くと、そこには長髪長身の。


 

——おじいちゃんがいた。


うん、そうだよね。そんな簡単に運命の相手に出会えるなら誰も苦労しない。


よもや、こんな下手な歌で呼び出されるとは。 下手すぎて思わず飛び起きたではないか
あのぅ、神様、でしょうか
ふん、期待に沿わないジジイ神で悪かったのう
聞こえてるーー!

嘆かわしい。いとも簡単に心を読まれるとは。巫女のレベルも随分と下がったようじゃ。

お前みたいな小娘の願いなぞ、叶えてやらんわ……と言いたいところだが、貴様よく見ると巫女ではないな。何者じゃ。名を名乗るがよい

どうやら、神様ではあるらしい。
えっと、アリス・グレイウェーブ、です
ほう、名の通り、どっちつかずのようじゃな。感じるぞ。魔性に出遭いやすいのが、悩みかのう?

さすが、神様!私の悩みを看破するなんて。

イケおじだわ、カッコイイ!

一応願いはきいてやったが、今更持ちあげても、願いは叶えてやらんぞ
バレたか……
と言いつつ、顔がにやつているような

に、にやつとらんわ! 生意気な人間め。

食ってやろうか!

え、食う? 

食うって言った? 今。

………またまたご冗談を、神聖な神様ですよね?
神は雑食じゃ。諦めて贄となれ
いやああああああ! 私、美味しくないですー!
嘘つけ、質の良い魔力じゃ。贄にピッタリ
いやいやいやああああ!

私は襲い掛かってくる神様をみて思わず、目を閉じて夢中で蹴りや拳を放った。 


ぎゃふん
えっ

目を開けると、神様が倒れていた。

なんか身体も縮んでる。


力がでん……人間め……。神への信仰を疎かにしおって。こんな小娘に負けるほど力を失っているとは
た、助かった〜
私はその場でへたり込んだ。
ふん、やむおえんか
おい、小娘。願いを叶えてやってもいいぞ
え、本当?!

ただし、一つ条件がある。貴様に取り憑くぞ。小娘。お前の魔力は上質だからな。魔力を食って、ワシの力が戻ったら願いを叶えてやるわい。

だからお前の魔力を暫くのあいだ食わせろ

ええ、食べられるの……?
安心せい。一気には食わん。せいぜい寝て起きたときに少し、身体が怠くなるぐらいじゃ

優しいおじ様だわ! イケおじだわ!


わかったわ。おじ神様
おじ神はやめてくれんかの?!
おじ神様、おじ様って言われるのを気にしているかしら。小さくなっているのも相まってちょっと可愛い。
神に可愛いとか不敬じゃ!
と言いつつ、仰向けに倒れた状態でも足はるんるんしてますけど
し、しとらんわ!
いや、どうみてもるんるんしているわね
いやだから、しとらんと——
……ふふふ
何がおかしい?

自分でもなんで笑っているのか、よくわからなかった。

けれど、なんとなく嬉しかったのだと思う。


——今思えば、それはきっとこの出会いが。

なんでもない。


えっと……これからよろしくね、おじ神様

ふん、よろしくじゃ……アリス。まあ、なんだ、願いが叶って友人が出来ると良いな
やっぱり、優しくて可愛いイケおじ神様だわ!
神に可愛いとか不敬じゃと言っとるじゃろー!
私にとって、家族以外で初めての繋がりができた瞬間だったから——
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

アリス・グレイウェーブ

15歳


魔物を引き寄せる力と性質を持つ。

この力のせいで、周囲の人間からは忌み子と嫌われている。

力を手放すため、願いを叶えてくれる神様を呼び出そうとする。


おじ神様



願いを叶えてくれる神様。

アリスによって呼び出されたが、力を失っているようだ。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色