(二)-15

文字数 505文字

 その夜、巨勢は自宅に帰宅した。妻の静華が赤ん坊を抱きながらソファで寝ていた。
 巨勢は「おい、こんなところで寝るな」と妻を起こした。
 妻は目を覚ますと、謝りながら子どもを寝室のベビーベッドへ寝かせにいった。
 リビングのテーブルの上には、息子が書いたと思われる画用紙とクレヨンが散らばっていた。ソファの上は洗濯物がたたまれずに置かれているばかりかブロックのおもちゃなどもほったらかしにされていた。
 二人のときには仕事から帰ってソファにもたれてゆっくりテレビを見ながら酒を飲むという生活を妻とは夢見ていたものの、実際に生活を送ってみると、そんなことができる機会は妻が出産するときまでで、それ以降は全くできなかった。
 妻からは子どもの世話や家事を手伝って欲しいと頼まれることもあった。しかし巨勢自身はそんなことをやりたいとは全く思わなかったので、やらないでいた。
 だから、このときもリビングの散らかりようについて、妻に釘をさすつもりで一言その点を指摘した。
 すると、いつもの通り、妻は「それならあなたも少しは子どもの面倒見てよ」と言ってふくれるのであった。
 巨勢はその言葉に「ああ」とだけ応えて風呂に入った。

(続く)
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