不良債権

文字数 2,735文字

こちらで不良債権さんが執筆なされます。観客の皆様は書き込まないようお願いします。
小さいころは人間が一番嫌いだったが、今ではその順位はジャガイモに塗り替わり、固定されている。
人間がジャガイモになった、あの日から。
だから俺はジャガイモを狩っている。
絶滅は無理でも、視界からは消去したい。
今日も山に来たジャガイモを狩る。
ジャガイモを狩るときはいつもライフルを使う。
近づくのは危険だし、気持ちが悪いからだ。
だから今日もいつもの通り、少し離れ所から銃弾を撃つ。
ジャガイモは爆散し、動かなくなる。
今日もいつものように、そうなるはずだった。
「うおっ。急に撃ってくんなよな。無敵とはいえ、当たると痛いんだよ、多分。当たったことねえし、当たんないけどな。」
ジャガイモが喋るのは普通だ。
銃弾を避けたのられたこともある。
だがこいつは今まで出会ったジャガイモどもと比べて明らかに異質だ。
まるでこちらの存在を全て見透かしたかのような言葉を放っている。
悪寒を感じる。
ジャガイモ狩りの経験が俺に逃げろと囁く。
俺はすぐさま撤退に取り掛かった。
ただでさえ馬鹿らしい状況にいるのに、化け物じみたジャガイモになど関わっていられない。
「まあ、逃げるよな、普通。逃がさないけど。」
いつの間にかジャガイモが近くに回っていた。
腰を抜かし、転んでしまう。立ち上がろうとするも、足が震えてしまっている。
だからジャガイモは嫌なのだ。
視認するだけならまだしも、近づくのが怖い。
あの日、見える世界が変わってしまってからずっとそうだ。
山奥でひっそりと暮らしているのも、近づいたジャガイモを壊しているのもそれが理由だ。
「あー、そっか。君はジャガイモが怖いんだったな。そんなら仕方ない。」
「これでいいか。」
目の前のジャガイモがいきなり、少年に姿を変えた。
ありえない。
俺の目には全ての人間がジャガイモに映るはずだ。
例外は無かった。だからここにいる。
「設定に人間だ、と書いて無かったからな。『人間じゃないが人間に見える生命体』に設定を確定させた。…とりあえず自己紹介といこうか。俺の名はスペクター。初めまして、狛田十四郎君。」
スペクターは俺に様々なことを説明した。
俺とスペクターが創作のキャラクターだということ。
ダンゲロスSSという競技のせいで争わなければならない宿命にあること。
彼の能力の事。
そして彼には1時間しか存在が許されていないこと。
理由は分からないが、俺はそれを真実だと受け入れ、理解した。
その上で、俺は問う。
「お前は一体、何がしたいんだ。」
コイツのやっていることは意味が分からない。
面白いSSを作るのに協力するわけでもなく、創作者に反抗するわけでもない。
久しぶりに生の人間に会った興奮も忘れ、疑問が膨らむ。
「俺の能力は不良債権のSSでは原理的に使用できない。…負けSSが書けないからな。だからアイツはまっとうなバトルを書くのを諦め、俺にメタ生命体であるという設定を加えたんだ。まあ説明文に『無敵だが、2017年5月6日の22時30分〜23時30分の間しか生きられない悲しい生命。』とか書いてあるからそこまで逸脱した後付けという訳でもないよな、と不良債権は思っているらしい。その上で俺に与えられた任務は『なんでもいいから狛田が勝ったような感じにさせつつSSを終わらせる。ただし、手抜きに終わらせないために尺はある程度稼げ』という無茶ぶりだ。具体的な方法はわからん。…不良債権もこれを書きながらどうすればいいか考えているはずだ。」
頭が痛くなると同時に、スペクターが哀れになった。
感傷的な気分であったからでもあるが、単純に生みの親に短い生命しか与えられずに、その対戦相手にこき使われている奴に哀れ以外の感情を持ちえるはずがない。
「哀れに思う必要はないよ。お前だって哀れだ。SSの面白さのために変なキャラ設定を持って生み出され、暗殺に失敗し、技量のせいで殆どモノローグしか使われてないんだから。お前が喋った言葉は『お前は一体、何がしたいんだ。』だけだぞ。…まあいい。お、今、不良債権がこのSSをいい感じに終わらせる方法を思いついたらしい。…ああ、うん。わかった。それしかないよな。いいか。狛田、よく聞けよ。」
スペクターは深呼吸をする。
「お前の能力を消去してやる。」
俺は息を飲み、ことばを失った。
「細かい説明はしない。時間が無いからな。だが、お前が幸せになるにはそれしかないというのがわかるだろう。そのどう考えても社会生活に支障をきたし、戦闘でも防御くらいにしか役に立たないその能力では不要だ。」
嬉しい。
すごく嬉しい。
自分の運命を何度呪ったかもわからない。
生きづらさを解消するためのもののはずだったのに、これは俺に苦しみしかもたらさなかった。
歓喜の中で、ふと疑問が生まれる。
ここで能力を失ったとしても、俺はもう二度と描かれることが無いだろう。だったら意味がないのではないか。
「ああ、それは…」
「不良債権だ。ここからは俺が説明しよう。お前は『ここで能力を失ったとしても、俺はもう二度と描かれることが無いだろう。だったら意味がないのではないか。』といったな。だったら簡単だ。俺が『SSが終わっても彼の人生は続く』と書き加えればいいのだ。」
そんな無茶苦茶な。誰が納得するというのだ。そもそも作者が出てきていいのか。
「俺が出てきたのは単純に打算だ。思いつたし、面白がってくれればいいなあ。票も欲しいなあ、という。『誰が納得するというのだ。』の方は、俺が文句を言わせない。ハッピーエンドだからいいじゃないか。そもそも物語は読者が納得しようがしまいが存在するものだ。評価の上下はあれ、存在そのものを否定されるいわれはない。」
「俺もそう思う。というかお願いだから幸せになってくれ、俺の設定は岡田拓也さんの管轄だからどうしようもないが、お前は幸せになれるんだ。頼む、俺の分まで生きてくれないか。」
かくして俺は勝利した。
これがハッピーエンドと言えるのか俺には分からない。
まあ作者が言っているからそうなのだろう。
どちらにせよ、俺の人生は終わらないからどちらだってかまわない。
俺の人生が続くとしても、それを記すには時間が足りなすぎる。
この後の物語は読者様の想像にお任せする。
名前:狛田十四郎
性別:
能力:なし。スペクターとの戦いを経て作者権限により消去された。
戦う動機:もうない。平和に暮らせる。
キャラクター設定:人付き合いが苦手な青年。その性格から能力に目覚めたが、目覚めたら目覚めたでノイローゼになった。その後、山でひっそりと暮らしていていた。 能力を消去されても、SSが終わっても彼の人生は続く。
すまんアカウント変更で戸惑った!終わり!終わりだぞい!

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登場人物紹介

名前:スペクター
性別:男
年齢:12

特殊能力:死の念
スペクターが相手の死を願うと相手は死ぬ。

設定:第14回ダンゲロスSSの為だけに存在を許された少年。無敵だが、2017年5月6日の22時30分〜23時30分の間しか生きられない悲しい生命。

相手を倒したい動機:自分の存在を確認する為。

名前:狛田十四郎
性別:
能力名:ジャガイモ畑に囲まれて
人間をジャガイモとして扱う能力。
幼いころ人前で話すことが苦手だった彼が「ジャガイモと思えばいいよ」というアドバイスを真に受けたことで発現した能力。
彼の認識では、全ての人間がジャガイモに感じられている。
ジャガイモのサイズはそれに対応する人間の頭部の位置に浮いているように見える。
人間が身に付けている装飾品、物品も視認することができない。
狛田にはジャガイモが浮いているように見える部分(つまり頭部)以外干渉することができず、それ以外の場所に触る、物を投げるなどすると周囲の人間からはすり抜けているように見える。
人間の側からも狛田が認識していない部分で彼に接触することはできない。ただし、銃弾やボール等、一度彼の手から離れた物は狛田に認識されるため、それらの手段で攻撃することは可能。声も空気を介しているため聞こえる。
狛田がジャガイモを攻撃した場合、砕けたり真っ二つににならない限り、どんなに傷がついてもその人間にダメージはないが、砕けたり真っ二つにになった場合はどんな人間であろうと全身が四散する。
戦う動機:世の中にジャガイモが多すぎるから。
キャラクター設定:人付き合いが苦手な青年。その性格から能力に目覚めたが、目覚めたら目覚めたでノイローゼになった。現在は山でひっそりと暮らしている。

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