第7話 ワイドショー

文字数 662文字

 白河桂里奈はこの好々爺(こうこうや)を見ると「げげっ」と言った。
 神崎は「げげっ」と言う白河をムムっと見たが、何も言わなかった。

 この老人は、みしま・クリエイティブ・エンタテインメントという超有名芸能プロダクションの会長で三島剛太郎という。
 もちろん神崎はそんなことは知らない。
 ともかく、この老人は神崎探偵事務所にしばしばやって来る。
 神崎のことを気に入っているのだ。

 芸能界にいる者なら誰でも知っていることだが、三島は裏社会とつながっている。
 というより、裏の顔はヤクザそのものである。

 その三島がソファーに座ろうとするので、桂里奈は慌ててそこからどいた。
 そして、三島はテレビをつけた。
 神崎自身はテレビを見ないのだが、テレビはある。
 というか、この老人が持参してきてこの事務所に設置したのである。

 テレビでは朝のワイドショーをやっていた。
 白河桂里奈が行方不明になり3日経ちますとリポーターらしき女性が声高に叫んでいる。
 三島老人は、白河桂里奈の映像をみて目を細めた。
 おそらく、この老人、白河のような美少女が好きなのだろうと神崎は思った。

「そういえば、この白河というのを警察が探していますね」
「だろうなあ。できればうちの会社に欲しいところだ」

 うちの会社とは新宿少女歌劇団のことだろうか?
 まあいい、可哀そうな老人の戯言(たわごと)であろう。神崎はそう思った。

 神崎は " しのぶ " を見た。テレビに映る白河桂里奈によく似ている。
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