第2話(4)最高のブルー

文字数 2,056文字

「コウモリ怪人さま!」

 全身黒タイツの者が蝙蝠の顔をした怪人に近寄り、敬礼する。

「……首尾はどうだ?」

「はっ! 各地点に散らばりました!」

「うむ……」

「それでは実行に移します!」

「ま、待て!」

「えっ⁉」

「えっ⁉じゃない! なにを実行に移すつもりだ⁉」

「……さあ?」

「さあ?じゃないだろう!」

 コウモリ怪人が呆れる。

「ええっと……」

「指示を仰がないで行動するつもりだったのか?」

「ま、まあ……」

「なんということだ……」

「考えるよりもまずは動いた方が良いかと……」

「それはそうだが……」

「どうすればよろしいのでしょうか?」

「事前に話したはずだが……まあいい、今一度確認だ。私が校舎の屋上に向かう」

 コウモリ怪人が屋上を指差す。戦闘員が首を傾げる。

「屋上に……ですか?」

「ああ」

「なるほど、なんとかと煙は高い所が好きということですか?」

「違う! この広い敷地内を見渡すにはちょうどいい場所だろうが!」

「あ、ああ……」

「……貴様、ひょっとしてケンカを売っているのか?」

「と、とんでもありません……」

 戦闘員が慌てて手を左右に振る。

「……まあいい、私が屋上から指示を送るから各自その通りに動け」

「……飛べるんだから、最初からあそこに向かえば良かったのでは?」

「なにか言ったか?」

「い、いえ、なんでもありません!」

「よし、それでは屋上に向かう……!」

「待て!」

「!」

 青いスーツを着た男がその場に駆け付ける。

「貴様らの悪事もそこまでだ……!」

「ブ、ブルーセイバー⁉ どうしてこんな場所に⁉」

 コウモリ怪人が驚く。

「言う必要などないでしょう」

「ちっ……」

「聞けば素直に答えると思いましたか? 貴方はアホですか?」

「むっ……」

 コウモリ怪人がムッとする。ブルーセイバーが呆れ気味に両手を広げる。

「まったく……」

「む……」

 コウモリ怪人が周囲を見回す。

「……」

「貴様一人か? 他の連中はどうした?」

「今日は私一人です」

「なにっ⁉ な、舐めているのか?」

「いいえ……情報をもとに冷静に判断したまでです」

「冷静に判断しただと?」

「ええ、それくらいの数ならば、私一人でも十分だと……」

「な、なにを……!」

 コウモリ怪人たちが色めき立つ。ブルーセイバーがため息交じりに呟く。

「はあ……事実を指摘したまでなのですが……」

「ふ、ふん! どこまでその余裕を保てるかな? おい、かかれ!」

「はっ! 行くぞ! お前たち!」

 コウモリ怪人の指示を受け、戦闘員たちがブルーセイバーを包囲する。

「戦闘員ですか……雑魚が何人群がろうと一緒ですよ?」

「我々は戦闘員の中でも選抜された面々だぞ! 最上戦隊ベストセイバーズのメンバーであるお前にだって勝てるぞ!」

「選抜ですか……低いレベルから選んでも大して意味はないと思うのですが……」

「な、舐めるなよ! 行け!」

「おおっ!」

「……!」

「がはっ⁉」

 向かってきた一人の戦闘員をブルーセイバーが銃撃で倒す。

「ああっ⁉ じゅ、銃撃だと⁉」

「素手で戦うなど……それはあくまでも最後の手段です……」

「な、ならば! この部隊でも随一の俊足のお前が行け!」

「うおおっ!」

「はあ……」

「うおりゃあ!」

「………!」

「ぐはっ⁉」

 ブルーセイバーが向かってきた戦闘員の突進を見極め、銃撃一発で倒す。

「ああっ⁉ この部隊でも随一の俊足を一撃で……な、なんてことだ……!」

「……貴方たち、数の優位性というものを活かしたらどうですか?」

「はっ、そ、そうか! よし! お前ら、一斉にかかれ! どおりゃあ!」

「ふん……」

「げはっ⁉」

 ブルーセイバーの反撃で、戦闘員たちはあっという間に全員倒される。

「馬鹿正直に突っ込んでくれば、それだけ当てやすいというもの……むっ⁉」

「はははっ! 上に逃げれば、銃弾も届くまい! ブルーセイバー!」

 コウモリ怪人が翼を広げて空に舞う。

「射程距離というものはどうしてもありますからね……」

「制空権をとってしまえば、どうとでもなる!」

「……はっ!」

 ブルーセイバーがコウモリ怪人より上に飛んで見せる。

「‼」

「『最高』の私の前では無駄なことです……それっ!」

「ごはあっ⁉」

 ブルーセイバーの銃撃を食らい、翼を射抜かれたコウモリ怪人は遠くへ墜落していく。

「終わりましたね。戦闘員たちの確保は警察にでも任せましょうか……さて……」

 ブルーセイバーは生徒会室に窓から戻り、変身を解いて、正高に戻る。美蘭が問う。

「……私の前で変身しても良かったの?」

「まあ、知られても構いません。貴女には尋ねたいことがあるからな……」

「! 尋ねたいこと?」

 美蘭が身構える。潜入がバレたのかと考えていると、正高が近寄ってくる。

「いや、お願いしたいことと言った方が良いでしょうか……」

「お願いしたいこと? !」

「お願いします! さきほどみたいに私を上から目線で罵倒してください! 私が最高すぎるあまり、誰も私を見下してはくれないのです! しかし、貴女なら、私の望みは叶う!」

「⁉ へ、変態⁉」

 目の前で土下座する正高を見て、美蘭は困惑する。
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