エピソード2毒よ甘くあれ

文字数 2,565文字

無双を倒した一行は第二階層の階段を意気揚々と昇っていた。 
コン、コンと一歩一歩進むたびに大きく薄暗い階段に連鎖して行く。 
灯火を持ったリョウがチラチラとみんなのことを
確認しては女性陣のキャッキャッしたトークというトークがぐるぐるとした階段に充満し、それにリョウは何となく安心する。
その中でソフィはリョウの袖に手を引いて「コワイです・・・」とプルプルしているのをリョウが頭を撫でながら声をかける。
それをジェリーが中二病臭く二人をいじくってはリョウが苦笑する。
それに跨がるように女性陣と子猫達から「リョウ君構って~」とコールが続いてきた。
長い道のりでも、こうやって楽しく話していれば苦にならないわけだが・・・何だろう、今までに感じた事のない妙な殺気を感じる。
殺気の出し方からして、これは色仕掛け。
恐らく女性の殺気だろう。
その殺気に加え、香ばしい香りが僅かながら匂い立っていた。
そして、長かった階段にも光りが指して来た。
リョウは立ち止まってみんなに受け答える。
「みんな、次の師範には気をつけて。無双さんなんか比じゃない相手だから。気を引き締めて上位を目指そう」
リョウはその一歩を踏んだ。
そこはいかにも妖しげな煙がもくもくとうねってはやけに薄暗く、なかなかのいやらしい雰囲気を漂わせていた。
その正面には美味しそうなケーキな鎮座して、右側の隅のベッドに一人の女性が座っていた。
茶色が少し混じった黒のブーツにくびれたウエストと胸の谷間の露出がやけに高い衣装を着ていて、頭には魔女の帽子のようなとんがった物をかぶり、その貌はなんとも言えないエロスがあった。
スッと長い目先は美しいエメラルドのように、眉も美しく、絶妙なほどの凛とした顔つきは淡い唇とマッチしていた。
まさに美女という言葉が当てはまるほど、彼女は
神秘的だった。
そんな彼女が僕らを見つけて不吉に微笑みを深くして、リョウに近付いて来た。
「可愛いお客さんが来たものね。最近は誰も来なかったから寂しかったのよ。まあ、ルールは知っての通り、私を屈服もしくは格闘で勝利する事、いいわね?」
そうして彼女はリョウの額に手をそっと置いて、
ペロリと舌を巻いた。
皆にどよめきが走る。だが、リョウは顔色一つ変えずに彼女を見ている。
「ええ、構いませんよ。あなたを華麗に倒して第三階層への扉を開けて見せますよ」
「そう、じゃあ今からあなたは私のしもべになってもらうわ」
彼女がそう囁いた瞬間、バッ!とリョウの唇を奪ったのだ。
それにたまらず、ソフィやらジェリー達も驚きを隠せなかった。
そうする間もなく彼女とリョウのキスはどんどん熱くなっていき、次第にリョウの顔色が灰色のような顔つきになりリョウの手がブランブランと下に垂れ━━━━死骸と化した。
「こんな所かしら」
彼女がキスを終えると、すんなりとリョウから手を離した。
それと同時にリョウは壊れた機械のようにその場に倒れ伏す。
一同は混乱した。リョウがあのリョウがこんなにも簡単にやられるなんて・・・
嘘だと信じたい。
どうして、どうして、この女にリョウを殺されなくては・・・!!
気がつけば彼女達は狂っていた。
リョウを殺したあの女を殺してやる!!ただその事だけが先を行く。
だが、リョウを殺した彼女は指を一つ立て、皆の動きを触れもせずに止めては、バン!!と彼女達を吹き飛ばしたのだ。
その中で残っていたのはジェリーとソフィと数人残っているくらいだった。
「あら?もうおしまい?せっかくリョウ君から貰った力を存分に使おうと思ったのに」
「何!?主はあの口付けによってリョウから力を奪ったと言うのか!?」
ジェリーが驚きながらも問うとこの女は舌をペロリと巻きながら断言した。
「ええ、そうよ。本当に美味しかったわ。今までで一番ね。でも、私の事はちゃんとライフって呼んでほしいな」
「そうか、ならば全力でライフを倒すまでよ!」
ジェリーがそう言い捨てると両手をかざして大きな魔法陣を出現させ、「ドラゴンの追跡!!」と囁くように言った。
すると魔法陣の中からうねるように轟々と燃えたぎったドラゴンが貌を見せた。
そして。
「行け!」
ドラゴンの追跡がうねうねとライフへと突進して行くのをライフはすらりと避けてはリョウの反射技でドラゴンの追跡を吹っ飛ばしては追いかけられ、吹っ飛ばしては追いかけていく。
「さすがはジェリーちゃん。見事なまでの魔力。実に倒し甲斐があるわ。」
「カカ、いつまで余裕ぶってられるかのう。それに倒されるのは主のほうじゃぞ?」
ライフは促されるままに体を見るとジュワッと焼けるような衝動に駆られ、体という体に炎のドラゴンのうねるごとにライフを締め付けるのだ。
「あらあら、イタイじゃない。お姉さんにこんな事しちゃ、ダメだよ?」
「カカ、いつまで強気でいられようか。次は急所だ。行け!追跡のドラゴン!!」
炎のドラゴンは蛇の如くじわりじわりと近づき、尾と顔面でライフの急所を貫いた。
すかさず、ジェリーは必殺である業火鳥の歩みを投入する。たちまち辺りに美味なる匂いの火花が地に咲いた。
これで、リョウの仇が取れた。
これで悔い無く第三階層へ行ける。
ジェリーはその決意を持って天井を見た。
だが、その油断があだと化すとも知らずに・・・
「何!?」
瞬間、ライフの体はガラスの破片と化したのだ。
確かこれは、リョウが使う反射技じゃ・・・
「御明察」
「・・・・!!」
「私の能力は毒による吸収。相手の魔力やボディタッチをするだけで、奪えるの。こんなふうにね」
ジュワッ
この時、立場が逆転した。
ジェリーの体という体が悲鳴を起こし、とても苦しい。とても苦しい。
我は己の力で死すのだろうか・・・・
それにライフは悪戯ぽく手を下す。
「あなたの魔力を奪って、フィナーレよ!!・・・」
ライフがジェリーに手を下そうした時、
ライフの手を強く引き締めるもう一つの手があった。
月のような丸い目に白い肌。
なぜかそこには‘死んだはずの皐月リョウ’がライフと対峙していたのだ。
いつもと変わらぬリョウは再び、戦場を料理する。
「さあて、ライフ。お前は少しやり過ぎた。今度はこっちが料理する番だぜ?」

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