第1話

文字数 966文字

 この頃、都会の人混みで身のこなしが悪くなった。やばい、(山形県)庄内でいつの間にかのんびりし過ぎが身についてしまったのかなあ、と少し慌てている。
 先日、昼休みを利用して車に給油しに行った。最近は、田んぼの中にある農協のセルフのガソリンスタンドをよく利用している。その日は4つの給油機が先客の軽トラで一杯だった。待っていて気が付いた。4台とも車の運転席にも周囲にも誰もいないのだ。何と運転手のお爺さん達は外で話し込んでいた。少なくともこれから給油する気配は全くない。こちらは急いでいる。時間がない。クラクションを軽く鳴らしたが事態が分からないらしい。ん~、田舎らしい光景だなと思った。
 庄内空港で、搭乗に際しお手伝いが必要な人の優先搭乗があり、お年寄り達が搭乗した。皆、元気だ。搭乗機へ向かうボーディングブリッジの途中で記念写真を撮っていた。微笑ましい。しかし、何枚も撮っているうちに通路を塞いでいた。通れない他の搭乗者はイライラしている。でも誰もそれに気が付かない。ん~、田舎らしい光景だなと思った。
 これは自分の個人的な見解だが、動作や情景が田舎者に見える背景は、知識や経験の有無ではない。他人への無関心、配慮のなさではないかと思う。あくまで自分とその仲間のことが中心で、いわゆる「村」の世界の出来事なのだろう。
 先日、地元の居酒屋で隣に座ったお爺さんから質問された。「銀座で飲むには、背広のポケットに現金100万円持って行ったら、安心かのう?」答えに(きゅう)した。自分は今まで、100万円もの大金を現金で持って飲みに行ったことがない。自分の知らない夜の銀座の一部にはそんな世界もあるのだろう。思案した挙句、「ん~、行ったことがないからよく分からないけれど、100万じゃ心配だな。200万位持って行ったらどうですか?」と答えておいた。もちろん200万円の根拠はない。
 「んだの~。」そう(うなず)くお爺さんの瞳は、自分の未知の世界を想像してキラキラと輝き、田舎者とは感じなかった。
 その日の居酒屋の飲み代は2,250円だった。

 さて写真は2018年6月初旬の早朝に撮影した羽越本線の特急「いなほ」と農道の踏切だ。

 この頃の庄内は太陽を浴びて輝き、冬の暗さがなくていい。
 輝くネオンもなく、田舎の自然を満喫できる。
 んだんだ。
(2019年6月)
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