第1話

文字数 1,101文字

ジムとベン

犬を圧倒的に可愛いと思う瞬間は
家族が家に帰って来た時の
喜びようである
嬉しさを全身に漲らせて
尻尾をちぎれんばかりに振って
からだぜんたいで おかえり 
おかえりと叫んでいるようだ
家族の帰宅をこんなに喜ぶ動物を
ほかに見たことがない 
もちろん 人間もふくめて

子どもの頃 
ジムという犬を飼っていた
昔は放し飼いが普通だった
ある日 学校から帰ってくると
家の前の道路にジムがじっと
こちらを見つめて座っているのが
かなりの離れたところから分かった
すると ジムは素晴らしいスピードで
私の方へ走り寄ってくるではないか
まるで ライオンのように気高く
私のもとへ一心に疾走して来るのだった
あの時の健気で気高いジムの姿が
遥かな時を経て私の脳裏に甦ってくる

犬は なぜ 主人だけでなく
家族ひとりひとりの帰宅を
あれほど喜んでくれるのだろう
学生の頃 夏休みに帰省して
久しぶりに我が家に帰りつくと
いつも真っ先にベンが鎖に繋がれたまま
勢いのあまり立ち上がったような状態で
息を苦しそうにして歓迎してくれた
その空いた両の手を宙に遊ばせ
必死に私に抱きつこうとしながら
嬉しさのあまり目まで剝き出しにして

私は明日から始まる
ベンとの夏の日々を思った


ファンレターの紹介と私のコメント

かけがえのない家族の一員

 2匹の愛犬、ジムとベン。詩の中から、今にも飛び出してきそうな勢いを感じました。ニコニコ満面の笑みで舌を出し、シッポがちぎれそうな位に力一杯振っている様子が目に浮かぶようです。その日1日の疲れどころが、日々の苦しみも吹き飛んでしまいますね。身体じゅうから、「お帰り!お帰り!嬉しいな、嬉しいな」と聞こえて来そうな位、表現が豊かですね。前足を空に浮かせ、お願い、お願いをする姿は本当に可愛くて、いつまでもぎゅーっと抱き締めてしまいます。私も昔、雑種犬を飼っていました。今でもその面影を懐かしく思い、またいつか会えたらいいのになと感傷に浸る時があります。犬は遥か昔から日本人と生活を共にしてきた家族の一員なのですね。『忠犬ハチ公』『南極物語』など、犬が主人公の映画は感動します。こんなにも健気で家族を精一杯愛してくれる生き物は、なかなか思い浮かびません。心が温かくなる詩をありがとうございました。


 自分の子どもが外から帰ってくる間、心配しながらじっと家で待っているしかないのですが、帰ってくると安心してしまい、犬のように大はしゃぎで迎えることはありません。だから、犬のあの異次元の喜びようは素晴らしいなと改めて感じました。犬の存在は孤独な人にとってとても大きいのではないかと思います。私も犬のように心から喜びながら家族や友人との再会を果たしたいです。
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