第1話

文字数 971文字

 ある日の病棟の朝回診。
 86歳男性が夜間に緊急入院していた。当直医からの申し送りの診断は「誤嚥性(ごえんせい)肺炎」だった。
 「あれぇ? この患者さん、一昨日(おととい)退院したばかりじゃない?」
 誰からとなく指摘され、皆で、患者さんを診た。
 「え~ホントだ。確かに僕の患者さんでした。」
と、名乗り出る担当だった研修医。
 「ちゃんと治してから退院させたんだよな?」
と、責め立てられる。
 「も、もちろんです。」
 ()()然々(しかじか)、担当の研修医の話では、この患者さんは嚥下(えんげ)機能(=物を飲み込む働き)が低下し、誤嚥性肺炎を起こし入院していた。加療の結果、すぐに軽快したが、嚥下機能の低下が著しい。普通の食事を再開したらすぐにまた誤嚥性肺炎を起こす可能性が高い。だから食形態や食事中の体位を工夫して少しでも誤嚥の危険性を下げるようにしてから退院した方がいいと家族に話をしたそうだ。
 ところが、
 「父は、食べることだけが唯一の楽しみだから、父の好きなものを父の好きなように食べさせたい。」
との娘さんの強い要望があった。最終的には娘さんの意向を尊重して退院となったそうだ。
 成る程…。
 医学的には担当医が最初に示した判断は適切だったと思う。
 しかし周囲の状況を勘案(かんあん)して下した最終的な判断の結果、この患者さんがたどった臨床経過は、最善の経過だと言えるのだろうか? 高齢者医療の現場では、人間の尊厳、個人の人生観や価値観、プライド(誇り)、宗教観などおよそ医学とは程遠い要因が複雑に絡む。

【医学】人体や病気の本態を研究し、病気の予防・治療を行い、健康を維持するための学問*。
そして、
【臨床】病床に臨んで診療すること。患者に接して診察・治療を行うこと**。
(*, ** いずれも goo 辞書から引用した)
である。

 その日、患者さんは 39.1℃まで発熱した。
 
 さて写真は 2017年9月17日、東京数寄屋橋(すきやばし)の不二家レストランで撮影したマカロニグラタンである。

 実は私はマカロニグラタンが大好物だ。飲んだ時でもメニューにマカロニグラタンがあるとつい注文してしまう。
 しかも、一つまみの塩を掛けると、グラタンの旨味が増してさらに美味しくなる。
 体には悪いかも知れないが、「好きなものを好きなように食べる」のもいいのでは…、ただしあくまで自己責任の範囲で。

 んだんだ。
(2023年10月)
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