第3話

文字数 322文字

 本当は、彼に会いたくてたまらないのだ。私たちは、一度も顔を合わせたことがない。彼とはSNSでたまたま繋がった。それ以来ずっと、電話ばかりが続いている。私にとっての彼は、そして彼にとっての私も、実体のない声だけの存在だ。
 だから、私がインコを探すと言ったとき、私の下心が彼に伝わったような気がした。インコなんてどうでも良くて、本当はただ彼に会いたかった。回りくどい言い方でも、彼に会いたいと伝えたかった。

 いつか勇気が沸いたら、今度はごまかさずに伝えてみようと思う。あなたに会いたい、顔を見てみたいと。でもそれには、もう少し時間がかかりそうだ。
 その翌日、彼のインコは無事に見つかった。インコは洗濯籠の奥の方で、のんきな顔で眠っていたという。
 
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