第2話

文字数 830文字

ーーピピピピピピピピ

「うぅ……。眠い……」
俺、小森拓人(こもりたくと)はベッドに置かれはスマホのアラームを切った。二度寝の態勢に入ったが、五分後にセットされたアラームに打ち砕かる。昨日の俺に予知されたらしい。

 それにしても嫌な夢を見た。内容は全く思い出せないが、感覚が覚えている。
「うわー、汗かいてる。気持ち悪い」
 これはシャツも変えないといけない。憂鬱な気分でクローゼットに開く。ポトンと何かが落ちた。
「あー、ここにあったのか」
 汚れたサッカーボールだ。小学生の頃からやっていて、将来はサッカー選手になりたかった。中学に入り、自分より上手い人が沢山いて、あっさり諦めたが。そんな浅い感傷に数秒浸って、ボールを棚の上に戻す。
 早く着替えないと、遅刻するのだ。





今日は午後から雨が降るかもしれない。朝の情報番組を見ながら、朝食を食べていた俺は、思わずため息をついた。
「朝からため息なんてついてたら、幸せもやってこないぞ」
向かいに座る小森泰造(こもりたいぞう)は呆れたように笑った。
「ごめん、叔父さん。いやでも中途半端な雨って嫌なんだよ。いっそ土砂降りなら諦めもつくのに」
「いやぁ、そっちの方が嫌だろ」
「それに休みになるかもしれないし?」
「そっちかよー」
 そうこうしているうちに、ニュースキャスト切り替わり真面目なニュースを読み上げだした。そろそろ出る時間だ。
「なぁ、拓人。このニュースどう思う?」
「えっ?」
画面に目をやる。長い裁判の末、とある人物の死刑判決が決まったとのものだった。あまり知らないが、4、5人ぐらい無差別殺傷したという酷い事件だったが。
「えっ、これ?」
「うん」
「いや、朝から死刑の話は重いって」
「そっか。あっ、今日病院の検査の日だから忘れるなよ」
 なんだよと言う前に泰造はさっさと切り上げ、皿洗いを始めてしまった。
「わかってるよ。行ってきます」
 出かける前に俺は仏壇に手を合わせる。写真の両親にも。これだけはどんなに急いでいても忘れない。
「行ってきます。お父さん。お母さん」

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