第1話
文字数 422文字
薄暗い、長い通路を進んでいる。ここがどこなのかはすぐに分かった。壁に均一に並ぶ額縁に入った絵画。ここは恐らく美術館だ。僕はそれを眺めているが、生憎興味はない。そうやってぼんやり眺めて、やがて突き当たりにたどり着いた。
一際大きな絵だった。金色のいかにも高そうな額縁に入った絵。木製の十字架に磔にされた男。群がった民衆。この絵のことは知らないが、この絵の場面は僕でもわかる。中央で磔にされているのは、きっとイエスキリストだろう。
僕は知らないその絵に近づいた。いや、見覚えがある。中央に磔にされた人間にだ。それはいつの間にかキリストではなくなっていた。でも思い出せない。
ボッと音がした。一瞬で絵は炎に包まれた。僕は咄嗟に身を引く。よく見れば、その絵に描かれた人間全て知っている。だが、誰一人として思い出せない。爛れて消えるその絵を呆然とみている。
あれ、違う。中心で燃え尽きそうなその顔は。
苦しそうな、何かを叫ぶあの顔は。
あれは、僕だ。
一際大きな絵だった。金色のいかにも高そうな額縁に入った絵。木製の十字架に磔にされた男。群がった民衆。この絵のことは知らないが、この絵の場面は僕でもわかる。中央で磔にされているのは、きっとイエスキリストだろう。
僕は知らないその絵に近づいた。いや、見覚えがある。中央に磔にされた人間にだ。それはいつの間にかキリストではなくなっていた。でも思い出せない。
ボッと音がした。一瞬で絵は炎に包まれた。僕は咄嗟に身を引く。よく見れば、その絵に描かれた人間全て知っている。だが、誰一人として思い出せない。爛れて消えるその絵を呆然とみている。
あれ、違う。中心で燃え尽きそうなその顔は。
苦しそうな、何かを叫ぶあの顔は。
あれは、僕だ。