遂に悪を倒す、我らが英雄

文字数 607文字

 ヒデオは故郷の静岡県は沼津をあとにし、東海道線で一路、魔都、東京へ向かった。

(あすこには、有象無象の悪党どもがはびこっておる。我がシズオカ剣で、片っ端から斬り倒して進ぜよう!)

と怒りに震え、同時に、

(あすこに囚われた、無数の可憐な魂を持つ者たちを、この手で救って進ぜよう!)

と、慈悲深い想いを抱き、微笑を浮かべた。それが5秒ごとに交互に替わるので、兜を着けていなければ、一発で情緒不安定すぎる人認定を受け、電車から降ろされていただろう。兜を着けていたことは、賢明すぎるほど賢明だった……。

 やがてヒデオはゆりかもめに乗り換え、東京ビッグサイト前で厳かに下車した。ヒデオは一つ息を吐くと、地面も割れんばかりの気勢(奇声)を上げて、一人駆け出した。

 目の前には世界中の悪が集結していた。ダース・ベイダーやジョーカーやバイキンマンやドロンジョや、たまに間違えてミッキーマウスやらを、剣で斬り倒す、というより、叩いてまわってやっつけ、命だけは助けてあげたのだった。慈悲深き、我らが英雄……。

 ヒデオがすべてを成し遂げると、それを労うように、キビキビとした礼儀正しい国家公務員が、ヒデオをエスコートした。

 ヒデオは立派な個室を授けられた。また、世の中を明るくし、平和に貢献したためであろう、10日間、よく調理された御馳走に与るという、特別な栄誉を手にしたのであった――。

(つづくの!?)
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