1_プロット

文字数 1,171文字

「豆腐の口は花腐の門」プロット
起)江戸時代中期、主人公の女の子「小豆花」の生家ではいつも花が咲き狂い、その花びらは丁寧に摘み取られ、きれいな水に浸けられていた。豆腐とほとんど同じ製法だが、特別な育て方をした花で作る食べ物「花腐」。水飴よりも甘く美味く、一口食べれば十年寿命が延びると評判の花腐の製法は、小豆花の一族にしか伝わっていないものだった。小豆花は将来、花腐職人となり跡を継ぐため、花腐作りの入門として父に豆腐作りを習いながら、両親や妹と共に幸せに暮らしていた。

承)そんなある日、大火が江戸の町を襲う。小豆花が花腐の作り方を知る前に、両親は行方不明となり、家は焼け落ちる。花は一本も残っていない。大家は何もしないならば、家の敷地を空けて出ていくことを要求する。小豆花は失意の底にあった。立ち退きの前日、家の残骸を片付けていると、六歳の妹が突然家の前に無傷で現れる。「もう一回花腐を食べたい不思議なお兄さんが助けてくれたの」妹の言葉と謎の人物への恩、奇跡的に焼け残っていた先祖の手記の言葉から、小豆花は奮起する。自分の技術を向上させて、材料を集め直し、花腐を再び作る。その間も妹を食わせていく。すべての解決策として、家跡地に豆腐料理店を開店し、繁盛させることを誓う。店を開けるため大家の情に訴えたり、良質な豆や花の種の入手のために商家と知恵比べをし、競合店の妨害は機転で除ける小豆花。手に入らないにがりの代替品に、石膏から澄まし粉を作り使ったことで、花腐のように柔らかい豆腐を作ることができ、店は繁盛する。

転)小豆花の店に一人の男が訪ねてくる。「なぜお前は花腐を作らない?」妹を助けた天狗と名乗る男は、江戸の西のほうからきたと言う。当時江戸の西は幕府の直轄地であり、男はただならぬ気品をまとっていた。しかし、小豆花は花腐の再現が上手くいっておらず、材料の花すら育てられていない。「豆腐でごまかす」「売切れ」「材料薄」「希少な道具が必要」あの手この手で男をごまかそうとするも通用せず、彼はいらだち始めた。

結)観念した小豆花は心から謝る。花腐はもう作ることができないと言おうとする小豆花を遮って、妹は天狗に言う。「売切れも、材料薄も、希少な道具が必要なのも、全部嘘じゃあないの!大火からずっと品切れなだけで、いつかおねえは花腐を作る。だからそれまで、在庫補充まで待ってほしいの」天狗のもとで暮らしていた妹には、彼の言いそうなことがわかっていた。「ふん、なら良い。作れないと言ったならば、この店もお前たちの命もなかったな」はたして、妹の予想通りの返事をして、天狗は山へと帰って行った。後には、種をすぐさま開花させる不思議なうちわが残されていた。小豆花は店の大豆にうちわを使い、花開かせた。「粋な前金ねえ。仕方ねえ、もっと焼き豆腐の心底でやるか」
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