プロローグ
文字数 500文字
中学に上がって以来、夜は隣人の家で過ごしている。
幼い頃に母を失い、父も去年から仕事で海外。意図せず一人暮らしとなった結に、隣の
そこの一人娘である
二年生に上がり、新たな友達もでき始めた七月の上旬。去年より少しだけ難しくなった期末テストが返却され、征の部屋で二人、答案を見直している。
「あら結、すごいじゃない。理科は私より上よ」
「征のおかげだよ。私一人じゃ机に向かおうとも思わないし」
征の成績は、学年でも一位二位を争う。それにつられてか、結の成績もこの一年間でかなり伸びていた。要領がいいとは、自他ともに認めている。
「うかうかしてられないわね」
ふふ、と征が微笑み、自然と勉強が再開される。
課題があれば二人で片付け、なければ適当に過ごす、いつも通りの日々。
時が経つのは早いもので、一息つく頃にはすっかり夜も更けてしまっていた。
「明日起きれる?」
「うーん、無理だったら起こしてね」
「もう。いいわ、おやすみなさい。結」
玄関口で軽く交わすやり取りも、もう何度目か。
「おやすみ、征。また明日」