第1話

文字数 1,595文字

 みうちゃんは、おさんぽに アメを もって いこうと おもいました。
「とけてる」
アメの はいった かんの ふたを あけると、なかの アメは、どれも ぐったりしていました。つつんだ かみの すきまから、アメが とろーりと はみだしています。
 おきにいりの りぼんの アメは、さわると、ぷにゅりと へこんでしまいました。
 なつまつりで とってもらった きんぎょが しんだときみたいです。
「アメが、しんじゃった」
 みうちゃんは、そっと アメの かんを もちあげました。
「きんぎょの となりに、うめて あげよう」
「みうちゃん、うめないで。わたしたち、まだ いきてるの」
 アメが、おねがいします。
 げんきの ない アメは、どうしたら げんきに なるのでしょう。
「そうだ、れいぞうこ。まえに、おかあさんが いってた」
 みうちゃんは、すぐに アメを、れいぞうこに いれました。

「ただいまー」
 おさんぽから かえった みうちゃんは、れいぞうこに むかって いっちょくせん。
「よかった。かちかちに なってる」
 だけど、アメは とけるまえと ちがって、しろっぽくて、すきとおっていません。みうちゃんが、ゆびで おした りぼんの アメは、へこんだままでした。
 みうちゃんは、がっかりです。
「みうちゃん。れいぞうこは、あけっぱなしにしたら、だめ なのよ。なかの たべものの、げんきが なくなっちゃうからね」
 おかあさんは、れいぞうこを しめようと しました。
「アメがね、げんきが、なくなっちゃったの」
 おかあさんが、れいぞうこを のぞきます。
なかには、アメの かんが はいっていました。
「それで、れいぞうこに いれてあげたのね。すごい。よく きが ついたわね」
 おかあさんは、みうちゃんを ほめました。
「でもね、とうめいじゃ、なくなっちゃったの。おかあさん、もどせる?」
「もちろん」
 おかあさんは、こむぎこと バターと
たまごと さとうを、テーブルの うえに おきました。
「これから、クッキーを やきます。みうちゃんも、てつだってね」
 ざいりょうを、ビニールぶくろに いれました。
「みうちゃん。よく こねこねしてね」
 みうちゃんの となりで、おかあさんが、しろくなった アメを、いろごとに ビニールぶくろに いれていきます。
「おかあさんは、ふくろに はいった アメを、とんかちで、こわしちゃいます」
 とんとんとん とんとんとんと、アメを わっていきます。あっというまに アメは、ちいさな かたまりに なりました。
「みうちゃんの ほうも、もう いいかな」
 まずは、クッキーきじを たいらに のばします。
 さいしょに まるく かたちを ぬいて、つぎに まるの なかを ぬいて、ドーナツのようにします。
「みうちゃん。こんどは、あなの なかに、アメを いれてください」
「クッキーの うえ じゃなくて、あなに いれるの?」
 みうちゃんは、ふしぎだなと おもいました。でも、おかあさんは、「それでいいのよ」と、わらっています。
 ぜんぶの あなに アメを いれたら、じゅんびは おわりです。
 あとは、オーブンに いれて、やけるのを まつだけです。
 チーン
 クッキーが、できました。
「あっ。アメが、とうめいに なってる」
 しろっぽかった アメが、とけて あたらしく うまれかわったのです。
「おかしの いえの、まど みたい」
 みうちゃんは、みどりの アメの クッキーの まどから、そらを のぞきました。
 おひさまが、メロンソーダの なかに いるみたいです。
 おひさまは、いつもと ちがう そらの いろに よろこんで、およぎだしました。
「すてき。おひさまが わたしの なかで およいでる。みうちゃん、たすけてくれて ありがとう」
「どういたしまして」
 わらう みうちゃんの うしろで、わたしも わたしもと、アメたちが、さわぎだしました。
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