第1話 【映画評】MINAMATA-ミナマタ-(2021.7.11記)

文字数 1,146文字

【SDGs (プラス) キリスト教映画?】

1.作品データ
監督;アンドリュー・レヴィタス
原案;W.ユージン・スミス、アイリーン M.スミス、写真集『MINAMATA』
製作;ジョニー・デップ、アンドリュー・レヴィタス他
出演者 ジョニー・デップ、真田広之、國村隼
公開; 2020年(日本は2021年)
上映時間;115分
製作国;米、英

2.兎平亀作の意見です

「さすらいのヒーローが、町を牛耳る悪徳ボスをやっつける」と言う、アメリカン・ハードボイルドの「勝利の方程式」にはまんま忠実。
もちろん、これで良いのだ。ここで軸足がブレてしまうと、何を言いたい映画なのか分からなくなる。

ヒーローは完全無欠じゃ困る。
ジョニデ演じるヤサグレ親父は、やれアルコールだの借金だのと、問題のデパートみたいな男なのだが、最大の弱点は「家族とのこじれた関係」!
本作には「愛する家族を守るため、オヤジ大暴れ」式の、セガール=シュワちゃん=スタローン流マッチョ映画のDNAも、ちゃんと入ってる。
ただしマッチョはマッチョでも、酒びたりでヘロヘロで、最後はボコボコにされちゃうマッチョなんだけど。

そして(いちいち指摘はしないが)この映画の画面構成には、キリスト教的なモチーフが、そこここにちりばめられている。たとえば、ピエタ(聖母マリアと死せるキリスト像)とか、聖家族とか。
ストーリー上、一応カタルシスは設けてあるのだが、基本的に救いのない世界観だから、敢えて救いを求めるとすれば、この映画の外にそれを求めるしかない。それはやっぱ、キリストさまだと言うことになっちゃうんだろうなあ、アメリカ人が作った映画である以上。

まあ、この点は目をつぶろう。こういうスピリチュアルな側面が無かったら、本作はただの環境リベラル映画になっていただろうから。

それにしても、「なぜ今、水俣なんだろう」とは思った。やっぱアメリカ人の危機感の反映なんだろうか。「このままじゃ、この世界がどうにかなってしまう」と言う。

今回はたまたま環境問題に焦点が当たったが、人権問題も貧困問題も児童虐待も、全ての問題は繋がっている。SDGsは、そういう考え方に立つ。こういう世界レベルの危機意識で、日本人がアメリカ人に遅れを取っているのは恥ずかしいことだ。

「それにしても・・・」と思うのは、もしも私が水俣市民だったら、この映画、古傷に塩をすり込まれたように感じるだろう。
実は水俣病については、ある必要があって、まとめて調べたことがある。患者の言い分だけでなく、会社の言い分も、労働組合の言い分も、行政の言い分も、第二水俣病についてもである。
とてもここには書き切れないくらい、事態は複雑なのだが、「水俣が受けた傷は、この映画が描いたよりも、はるかに深くて重い」とだけは言っておく。
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