25話 見る目なき

文字数 275文字

男が、お会いしませんとは言わないが、まるで会ってくれない女に、言った。
 
 秋の野に 草をわけて帰る 朝露の袖より
 あなたに会わず 寝る夜は もっと 涙でぬれている
 
女は、風流を知っていたので、こう返した。
 
 海松藻(みるめ)のない海のように わたしが お目にかかることはないわ
 それを知らない海人みたいに あきずに来るけど おつかれね 
 
   *
 
 秋の野に 笹わけし 朝の袖よりも
 逢はで ()る夜ぞ ひぢまさりける
 
 海松藻なき わが身を 浦と知らねばや
 かれなで 海人の 足たゆく来る (小野小町の歌)
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み