死神はどっち?

文字数 753文字

「……またか。」
街の中央にある大聖堂。その中で、仲間の死神、アンペシアが裁きを受けているという情報が入った。
中を覗くと。
「お前は死神だな?」
「……そうだが、何か俺が悪い事でもしたか?」
「しているだろう!見境なく人の首を切って!」
まったく、人間は思い込みが激しいというものだ。きっとこの大聖堂に祀られている神が、死神だとは思ってもいないのだろう。ここに来ている物見遊山の見物客達は、地獄に連れていかれるに違いない。死神の目の前で、死神が裁きを受けているところを、軽い気分で見ているのだから。
「アンぺシア。もういい。来るぞ。」
死神が落とす、『恨みの雷』。それはあと20秒でこの大聖堂に落ち、ここにいる人間は地獄行き宣告を受ける。
人間はいつも、死神のせいにする。
人が死ぬのは、無用な恨みをかったから、もしくは寿命が来たから。
それを死神のせいにするなんて……死神はどっちだ。自分から死を招いているくせに。
死神の統括責任者、アスフォルト様が、魂の行き先を決める。
よく天国に行くか地獄に行くかを決めるのは閻魔大王だ、と噂されがちだが、閻魔大王は地獄の罰を決めるのだ。同じでは、ない。
・・・・
「閻魔……。しばらく忙しくなりそうだぞ。」
『またか……。人間も困ったものだ。愚かだな……。』
「そうだね。愚かだけど、その分僕らにはない心を持ってるね。」
『俺には分からん。なぜ酷い仕打ちを受けるのに、愛する者と共に地獄に来るものが居るんだ?』
「『愛』って名前の、僕らにはない人を大切に思う感情さ。その気持ちがある限り、人は愚かだけど、そんなところも含めて、僕は人間が嫌いじゃないよ。」
『相変わらずのお人よしだな。俺には縁のない話だ。』
まあ、亡者の悲鳴が日々聞こえる世界で暮らしていたら、いくら元が人間でも、人間味無くなるよね……。
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