死は突然に?いや、必然に

文字数 1,042文字

ヴァウンド家。古くから続く名家だ。現在当主は、ヴァウンド・スピアリディア。30歳。
若くして様々な会社を立ち上げ、その全てが成功。彼の人生に、これまでで『失敗』という二文字は刻まれていない。ただ、裏ではかなり、危ないことに手を出しているという噂。恨みを買ったのだろうか、○月の下旬に殺害されていた。
犯行現場を眺めるアレン。口元は隠されている……が、相棒コウモリのデスが見たらこう言うだろう。
〈あいつ、笑ってるよ。まあ死神だからな。少しは面白みを感じてしまうんじゃないのか?〉
と。その通り、アレンは……笑っていた。
夜。
アレンが庭にいる。
「はー、終わった終わった。くたびれたー。」
〈じゃあ早くルシファーに渡せ。回収はしてあるんだろう。〉
「はいはい……ルシファー、これ回収よろしくー。」
これ、という言葉と同時に、アレンの手にはオニキスが浮かぶ。
「あーあ、すっかり汚くなっちゃって。ヤバいことに手を出してるから、こんなに……。」
〈さっさとルシファーに渡せ。〉
「はーい……」
オニキスが浮かび上がり、庭の空間が裂ける。
開いたゲートは、亡者の悲鳴が染みついた鮮血の色。
「ああ、こうなるだろうとは思ってたけど……君は魂の浄化ができるまで、苦しみなよ。」
オニキスを掴み、砕いてゲートへと放り込んだアレンは、確かに向こう側でスピアリディアが叫ぶのを聞いた。そして、
「さあ、裁きの時間だ。」
という地獄の王の声も、飯にありつけることに喜ぶ地獄の番人どもの声も。
「待ちくたびれましたよ、デビルさん。」
「ごめんね、ルシファー。はい、これ回収したスピアリディアの魂の破片。」
「ありがとうございます。この後これから記憶を回収し、幻影地獄で使用させてもらいます。」
相手は悪魔であり、デビルの部下のルシファー。
魂から忌まわしき記憶を引き出し、幻影地獄で働く夢魔に記憶を渡す係だ。
「デビルさん、次のミッションは届きましたか?」
「まだ。そのうち来るんじゃない?」
そういった時に、クロネコが走ってきた。
〈デビル。次の仕事だ。ヴァウンド家の支家、ヴォスティア家で殺人事件が起きた。即時回収に向かうように。ルシファーは天国で待避せよ。〉
「了解しました。それではデビルさん、また後で。」
黒い翼をだして舞い上がったルシファーは、天国で魂を迎える準備を始めた。
〈デビル、今回は回収する魂が多いぞ。頑張れよ。〉
「了解です。」
死は誰の元へもやってくる。それも突然に。
でも、魂を正しい世界へと導く。霊にならないうちに。
それが、死神の仕事なのだ。
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