第2話

文字数 1,392文字

「なんでわたくしがお父様の指定した男性と結婚しなければいけないのです?絶対に嫌です!」

「お前なあ、アイドルばっかり追っかけてないで、もう少し自分の心配をしたらどうだ?」

「わたくしは、こんなお見合いのようなつまらない恋愛はしたくないのです!わたくしはもっともっと、運命的な、赤い糸で結ばれていると感じられるような恋がしたいのです!」

「はあ、わかったよ。まあまた話そう」

お父様はそう言って席を立ち、店を出て行きました。

わたくしはぷんぷんと目の前のクリームソーダに視線をおとします。

全くお父様はわたくしのことをなにもわかっていらっしゃらない。いくらわたくしがイエデカイ家の長女で、天真爛漫で、お肌も艶々モチモチの麗しい知性溢れる乙女であって、求婚の連絡が途絶えていないであろうとしても、お見合いなんてあり得ませんわ。ましてや政略結婚なんて、わたくしは絶対に嫌よ。わたくしはもっと、運命的な出会いを経て、ちゃんとした恋愛をしてお付き合いがしたいのよ!

「こんばんは、夢子さん」

はっと顔を上げると、目の前にはお目めくりくりの、それ故に鼻につく小柄な女性が座っていました。彼女は右手に持ったコーヒーを机の上に置きます。置くんじゃありません。

「なんですか?勝手に座らないでくれます?」

私は目を細め、眉をしかめました。

「怒らないでよ。私はね、未来から来た夢子さんの娘なんだよ?」

「え?」

思わず声をあげた。確かに、よく見れば私に似て、かわいらしい顔をしている。

「そ、そんな話、信じられるわけないでしょう?それにあなたが娘だったとして、はるばる未来から私になんのようだと言うのです?」

「やだなママ。私からママへの話と言ったら、パパのことに決まってるでしょ?」

ぱ、パパ!?

「わたくしは結婚するのですか?」

「もちろん、この後出会う男性とね」

あわわわ、そんなそんなとても心の準備ができていませんわ。それに子供ということは、わたくしはふしだらな行為を......?あわわわ、けしからんですわけしからんですわ。いえ、でも結婚しているのですからなんの問題もないはずです。ええ、そうです。

「ママがこの店を出ると左から男性は歩いてくる。それがパパ。ママはそこでつまずいて、このコーヒーを絶対に溢してパパにかけて。そしてパパも駅に向かうはずだから、駅までの15分でパパとママは打ち解けるはずだよ」

あわわ、そんなそんな展開が早すぎるわ。

「で、でも、わたくしはその後どうすればいいの?彼の連絡先は?住所はどうやって知ればいいの?」

「大丈夫だよ。私がユーチューバーの振りしてきっかけを作るから。うまく合わせててね」

う、うまく合わせる?もうちょっと詳しくおしえてくれないかしら。ああ、そんなことできるかしら恐ろしい恐ろしい恐ろしい。

「よしっ。じゃあ時間ないから、このコーヒー持って行って!頑張って!」

娘に送り出され、私はお店を出ました。すると娘の言うように遠くから男性が歩いてくるではありませんか!暗がりで顔が見えないので、わたくしは余計に緊張してしまいます。

ま、まさか本当に。

顔が見えました!とびきりの美男子というわけではありませんが、ストライクゾーンギリギリ!外角いっぱいのストライクですわ!お顔!オーケーですわ!
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