第26話 水盤の分身
文字数 1,544文字
私は、食堂での夕食を終えて自室に戻ってきた。
「サビィ、おかえりなさい。ツリーハウスはいかがでした?」
「クルック、ただいま。ツリーハウスはトラブルもあったが…まぁ、順調に建築する事ができた」
「それは良かったですわ。私も、そのツリーハウスを一度見てみたいですわ。きっと素敵なのでしょうね…」
クルックは、ツリーハウスを思い浮かべてうっとりとしている。
「もう少し落ち着いたら連れて行こう」
私の言葉にクルックがピクリと動いた。
「まぁ!それは嬉しいですわ!サビィ、約束ですわよ。私、楽しみにしておりますわよ」
「約束する。明日からは、いよいよ本格的な学びが始まる。今から水盤と相談するから、大人しくしているように」
「分かりましたわ。大人しくしています」
クルックは、そう言うとピタリと動きを止めた。
私は、水盤に歩み寄り話しかける。
「水盤、明日から子供達の学びが本格的に始まる」
私の言葉に答えるように水盤の水面が揺れる。
『承知している。サビィは学びに私を使用したいと思っている…そうじゃろう?』
水盤は全てお見通しのようだ。
私は頷くと水盤に問い掛ける。
「水盤、私と共に学びに同行してもらいたいのだか…」
『それならば…』
水盤が渦を巻き始め、その中心から小さな丸い物が姿を現した。
「これは…?」
『サビィ…これは、私の分身じゃ。学びには、この分身を持って行くと良いだろう』
私は手を伸ばし、その小さな水盤を受け取った。
大きさは、直径30㎝ほどで小さいものだが、見た目は大きな水盤と同じガラス製である。
『その水盤は、必要な時だけ水が湧き出でる。子供達に様々なものを見せてやりなさい。有意義な学びを期待しておるぞ』
「水盤、感謝する」
水盤は小さな波を立てていたが、徐々に静寂を取り戻していった。
私は小さな水盤をテーブルに置いた。
「さて、試してみるか…」
目を瞑り呼吸を整える。
「水盤よ…湧き出でよ」
声を掛けると、底から水が湧き出て水盤を満たしていった。
「水盤よ…セレンツリーの林を映してくれないか?」
私の声に応えるかのように、水面がユラユラと揺れセレンツリーの林を映し出した。
日が落ち、暗くなっている林にツリーハウスの灯りが所々に見える。
それは幻想的でとても美しい。
「とても美しい…」
私は思わず溜め息をついた。
「この美しく幻想的な風景を子供達に見せたい。映像を残す事はできないだろうか…」
『ふむ…サビィは、この風景を保存したいのじゃな…』
「もしや、できるのか?」
『お安い御用じゃ。』
小さな水盤の言葉と共に、水面が瞬時に凍りつく。
ツリーハウスから漏れる光が氷に閉じ込められ、滲んだ光が幻想的に揺れている。
私はその美しさに息を呑んだ。
「これは…なんと素晴らしい…」
『私は、この風景を氷に閉じ込めた。いつでも再現できる』
「水盤…感謝する」
『子供達の笑顔が見られるじゃろう…』
「もう少し、この美しい光を見ていたいが良いか?」
『良かろう。気が済むまで眺めると良い』
私は頷くとクルックに声を掛ける。
「クルック、相談は終わったから騒いでも大丈夫だ」
「サビィ、騒ぐなどと…私はそんなに騒いでいませんわよ」
「いつも騒々しいではないか」
私はクルックに聞こえないように呟く。
「え?サビィ、何か言いましたか?」
「いや、なんでもない。それよりクルック。水盤が美しい風景を見せてくれている」
私はクルックを壁から外し、小さな水盤に映し出されいるセレンツリーの林を見せた。
「まぁ!なんて美しいのでしょう!これは…これは…素晴らしいですわ!光が滲んで優しく輝いてますわ…」
水盤を覗き込んだ瞬間、クルックは感嘆の声を上げた。
「これは、現在のツリーハウスだ」
「まぁ…そうでしたの…とても素敵ですわ…」
私達は暫くの間、美しく輝く幻想的な風景を見つめていたのだった。
「サビィ、おかえりなさい。ツリーハウスはいかがでした?」
「クルック、ただいま。ツリーハウスはトラブルもあったが…まぁ、順調に建築する事ができた」
「それは良かったですわ。私も、そのツリーハウスを一度見てみたいですわ。きっと素敵なのでしょうね…」
クルックは、ツリーハウスを思い浮かべてうっとりとしている。
「もう少し落ち着いたら連れて行こう」
私の言葉にクルックがピクリと動いた。
「まぁ!それは嬉しいですわ!サビィ、約束ですわよ。私、楽しみにしておりますわよ」
「約束する。明日からは、いよいよ本格的な学びが始まる。今から水盤と相談するから、大人しくしているように」
「分かりましたわ。大人しくしています」
クルックは、そう言うとピタリと動きを止めた。
私は、水盤に歩み寄り話しかける。
「水盤、明日から子供達の学びが本格的に始まる」
私の言葉に答えるように水盤の水面が揺れる。
『承知している。サビィは学びに私を使用したいと思っている…そうじゃろう?』
水盤は全てお見通しのようだ。
私は頷くと水盤に問い掛ける。
「水盤、私と共に学びに同行してもらいたいのだか…」
『それならば…』
水盤が渦を巻き始め、その中心から小さな丸い物が姿を現した。
「これは…?」
『サビィ…これは、私の分身じゃ。学びには、この分身を持って行くと良いだろう』
私は手を伸ばし、その小さな水盤を受け取った。
大きさは、直径30㎝ほどで小さいものだが、見た目は大きな水盤と同じガラス製である。
『その水盤は、必要な時だけ水が湧き出でる。子供達に様々なものを見せてやりなさい。有意義な学びを期待しておるぞ』
「水盤、感謝する」
水盤は小さな波を立てていたが、徐々に静寂を取り戻していった。
私は小さな水盤をテーブルに置いた。
「さて、試してみるか…」
目を瞑り呼吸を整える。
「水盤よ…湧き出でよ」
声を掛けると、底から水が湧き出て水盤を満たしていった。
「水盤よ…セレンツリーの林を映してくれないか?」
私の声に応えるかのように、水面がユラユラと揺れセレンツリーの林を映し出した。
日が落ち、暗くなっている林にツリーハウスの灯りが所々に見える。
それは幻想的でとても美しい。
「とても美しい…」
私は思わず溜め息をついた。
「この美しく幻想的な風景を子供達に見せたい。映像を残す事はできないだろうか…」
『ふむ…サビィは、この風景を保存したいのじゃな…』
「もしや、できるのか?」
『お安い御用じゃ。』
小さな水盤の言葉と共に、水面が瞬時に凍りつく。
ツリーハウスから漏れる光が氷に閉じ込められ、滲んだ光が幻想的に揺れている。
私はその美しさに息を呑んだ。
「これは…なんと素晴らしい…」
『私は、この風景を氷に閉じ込めた。いつでも再現できる』
「水盤…感謝する」
『子供達の笑顔が見られるじゃろう…』
「もう少し、この美しい光を見ていたいが良いか?」
『良かろう。気が済むまで眺めると良い』
私は頷くとクルックに声を掛ける。
「クルック、相談は終わったから騒いでも大丈夫だ」
「サビィ、騒ぐなどと…私はそんなに騒いでいませんわよ」
「いつも騒々しいではないか」
私はクルックに聞こえないように呟く。
「え?サビィ、何か言いましたか?」
「いや、なんでもない。それよりクルック。水盤が美しい風景を見せてくれている」
私はクルックを壁から外し、小さな水盤に映し出されいるセレンツリーの林を見せた。
「まぁ!なんて美しいのでしょう!これは…これは…素晴らしいですわ!光が滲んで優しく輝いてますわ…」
水盤を覗き込んだ瞬間、クルックは感嘆の声を上げた。
「これは、現在のツリーハウスだ」
「まぁ…そうでしたの…とても素敵ですわ…」
私達は暫くの間、美しく輝く幻想的な風景を見つめていたのだった。