第24話 ツリーハウス

文字数 1,885文字

ーー1週間後ーー

今日は、子供達と一緒にツリーハウスを建築する日だ。
私達はセレンツリーの林で、子供達がやって来るのを待っていた。

「いよいよ、ツリーハウスを造る日が来たわね」

ブランカは嬉しそうにニコニコしている。

「きっと、子供達は楽しんでくれるだろう」
「うん。ツリーハウスを造るなんて、今までない試みだからね。きっと、喜んでくれるはずだよ」

私達は、期待と不安に胸が高鳴っている。

すると、遠くから賑やかな声が聞こえてきた。
その声が徐々に大きくなり、やがて子供達の姿が見えて来る。
子供達の前にエイミーの姿が見える。

「やぁ!エイミー」

ラフィがエイミーに歩み寄る。

「ラフィ、お待たせ。子供達を連れて来たわ。私もツリーハウスを造る手伝いをしても良い?」
「勿論だよ。人手は多い方が助かる。サビィ、ブランカ、エイミーも手伝ってくれるって」

ラフィが嬉しそうな笑顔で、ブランカと私を振り返る。

「そう。それは助かるわ」
「エイミー、助かる。ありがとう」

ブランカは笑顔だったが、表情が曇っている。
私は心配になり小声で尋ねた。

「大丈夫か?」
「大丈夫よ。心配してくれてありがとう。子供達の為にも頑張らなきゃね」

私は頷くと、エイミーと談笑しているラフィに声を掛ける。

「ラフィ。子供達が待っている。そろそろ始めよう」
「そうだね。それじゃ、始めようか」

エイミーが、子供達を集めて皆に話し掛ける。

「それじゃ、今からお待ちかねのツリーハウス作りよ。みんな、説明を良く聞いて頑張って造ってね」
「は〜い!」

子供達は、目を輝かせながら返事をした。

ブランカは、そんな子供達を笑顔で見ていたが、フワリと舞い上がると、セレンツリーに話しかける。

「セレンツリー、今日はツリーハウスを造るの。子供達の為に、またあなたの葉を頂いても良い?」

セレンツリーが枝をザワザワと揺らすと、たくさんの葉が舞い落ちた。

「セレンツリー、ありがとう」

ブランカはニッコリと笑い、セレンツリーに礼を述べた。

「わ〜!葉っぱがたくさん落ちて来た!」

子供達は、嬉しそうに舞い落ちる葉に手を伸ばす。

「みんな、これがツリーハウスの材料になるのよ。見ててね」

ブランカは葉を並べ手をかざし、材木へと変えていった。

「うわ〜!」
「ブランカ先生、凄い!」

子供達が感嘆の声を上げた。

「え…先生?」

ブランカは子供達から掛けられた言葉に驚き、思わず手を止めた。
すると、エイミーがクスクス笑いながら言った。

「私が子供達に言ったのよ。みんなに学びを教えてくれる天使は、サビィ先生とラフィ先生とブランカ先生だって」
「まぁ…そうだったのね」

ブランカは目を丸くしていたが、すぐさまニッコリと笑う。

「ちょっと照れるけど…嬉しいわ。私達は先生なのね」

すると、ブランカは子供達を集めて、小さな声で何か話している。

「ブランカは、一体何をしているのだ?」
「う〜ん…材木に変化させるコツでも話しているのかな?」

ラフィと私が首を傾げ見ていると、ブランカが顔を上げて私達を見た。

「みんな、良い?せ〜の!」
「サビィせんせ〜い!ラフィせんせ〜い!」

ブランカの合図で、子供達が一斉に声を上げる。

「は?先生?」
「え!ちょっと、先生なんてやめてよ」

私達は、突然先生と呼ばれ狼狽えた。
ブランカはクスクス笑いながら私達を見た。

「先生と呼ばれてどう?」
「ブランカ…驚いたではないか」
「そうだよ。先生なんて…ビックリしたよ」
「あら?2人とも先生に向いてると思うわよ。まさか、あんなに驚くとは思わなかったわ」

ブランカは、楽しそうに笑い続けている。
私はその表情を見てホッとした。
私の心配は杞憂だったようだ。

「それでは…ラフィ先生、ブランカ先生。ツリーハウスの建築を進めるとしよう」

私は、努めて冷静で真剣な表情で告げてみる。

「え…サビィ?」
「サビィ…」

ブランカもラフィもキョトンとしている。
私は、2人を見つめるとニヤリと笑った。

「え〜!サビィ…今の冗談だったの?」
「え!サビィが冗談?僕は幻を見たのかな…」

呆気に取られている2人の姿に、思わず笑いが溢れた。

「クックックッ…その2人の表情…」

私は耐えられず、肩を揺らして笑う。

「いや、驚いたよ…まさか、サビィが冗談なんてさ…」
「ええ…私も驚いたわ…」

私は、息を整えて2人を見た。

「私だって、ユーモアの一欠片くらい持ち合わせている。さぁ、ツリーハウスを造ろう。子供達も待っている」

私の言葉に2人はハッとする。

「そうよね。子供達が待ってるわ。ね、ラフィ?」
「ああ…うん。そうだね。ツリーハウスに取り掛かろう」

動揺を隠せない2人の会話を耳にし、私は口元を隠しコッソリと微笑んだのだった。







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