第2話

文字数 681文字

聞きなれた音に目を覚ます。……何で聞きなれているのか僕にもわからないが、それでもその音には聞き覚えがあった。五年前くらいに聞いた気がする。始まり、そういつも始まりに流れる音だった。
僕は道なりに進む。道なりなのは、それ以外に道がないからだ。前からもそう。例外は許されなかった。君が例外を許さないんだ。
誰かが作ったであろう、その道を僕は例外なく踏みしめていく。
「おお、【(ぼく)】。言いたいことがある。」
これは僕の祖父だ。僕を一人で育てている僕の唯一の肉親だ。祖父は言った。
「【(ぼく)】。これはお前の母親からの手紙だ。(とき)が来たら(わた)すように言われていたんじゃ。」
僕はその手紙を受け取り、中を開く。
「【僕】へ。
これをもらってるってことは、今も元気ってことね。おかあさん、嬉しいわ。あなたの成長した姿を見たかったけど、無理みたいね。きっとお父さんのように素敵な人になっているわ。
私は今、王宮にいるの。けど私じゃ力不足みたい。…だから、あなたに頼みたいの。ごめんなさいね巻き込んでしまって。でもあなたならできるって信じているから……。
姫様を助けてあげて…                  私のいとし子、【僕】」
僕はそれを祖父に話す。祖父は驚いた顔をする。
「そうか、マリナはそれを【僕】に…。」
苦しそうな顔をしてそれから僕を見る。
「【僕】、これからどうしたい?お前の母が言ったように王宮へ行くか、行かないか。決めるのは【僕】、お前自身だ。」
僕には選択肢はない。選びたいけど無理なんだ。どんなに行きたくない理由があっても君がそれを許さない。
僕は首を縦に振った。

 こうやって物語が始まる。
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登場人物紹介

名前:「僕」

説明:「姫」をいつも助けなければならない


名前:姫

説明:「僕」がいつも探している「姫」

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