第1話

文字数 834文字

 暗い冬が終わり、春が来て桜が咲く。桜が咲くと明るく華やかで心が浮き立つ。
 桜は私たち日本人にとって特別な花のように思う。桜は春、まさに新しいことの始まりを連想する。だから入学式、入社式などの桜の咲く4月を新年度とし、1年の始まりとしたのではないだろうか?と思ってしまう。当院も毎年4月に新入職者を迎えるが、私は彼らの夢と希望、そして少し控えめで緊張感に満ちた輝きが好きだ。
 どの民族にとっても、その歴史や文化に深く関わる物には様々な呼び方、それに関連する表現がある。桜にまつわる言葉と言えば、朝桜、桜紅葉(さくらもみじ)徒桜(あだざくら)、薄桜、薄花桜(うすはなざくら)姥桜(うばざくら)桜雲(おううん)、遅桜、観桜(かんおう)桜衣(さくらごろも)、桜色、桜狩り、桜前線、桜人(さくらびと)、桜吹雪、里桜(さとざくら)残桜(ざんおう)、葉桜、初桜(はつざくら)花霞(はなかすみ)、花冷え…など、実にたくさんある。
 また桜の開花にしても、開花宣言、1分咲き、3分咲き、5分咲き、満開などと、細かな言葉があり各々が咲き具合を連想する。さらにテレビなどでは毎日、桜前線と称して日本各地の桜が満開になる日を予想している。それ程、桜は私たちの日常や文化に溶け込んでいるのだ。
 また日本人には、桜吹雪と表現するように、桜が散る風情をよしとする感性もあるようだ。散るもの、去るもの、滅びゆくものに思いを()せる。桜の散り際には美しさ、(いさぎよ)さがある。
 ところで、桜の花の話からは飛躍するが、私は人生の終末期を病院で迎える人を何人も看取ってきた。が、これがなかなか難しい。本人が「桜が散るように」と願っていても、その時の環境や周囲の状況でそうはいかないことが多々ある。ん~、散った桜は来春にはまた咲くが、命はそうはいかないからかなあ…、と考えたりしている。
 さて写真は、2019年4月に撮影した山形県庄内町西袋(にしぶくろ)京田川(きょうでんがわ)土手の桜並木と残雪を戴く月山(がっさん)である。

 写真には写して伝えたい主題と副題がある。望遠レンズで副題の月山を主題の桜に引き寄せた。桜の華やかさと、月山のスケールの大きさの対比が面白いと自画自賛している。
 んだんだ!
(2022年4月)
 
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