02．ショッピングセンター その１
文字数 5,619文字
［石田 光路郎］
何事も無くて良かった
［山ノ下 かほり］
コイツｗ
［君入 宗太郎］
石田っちまだいたんだ
［石田 光路郎］
帰らないよ
［君入 宗太郎］
犬も追ってくれないし何にも助けてくれないし
［石田 光路郎］
犬は追ったよ
［山ノ下 かほり］
嫌々ね
［君入 宗太郎］
大丈夫だった？
［少女］
すみません、ありがとうございます
大変助かりました
［山ノ下 かほり］
何をされていたの？
［少女］
突然あの人が話しかけてきていきなりプレゼントのようなものを渡してくるんですけど、わたし全然知らないのでお受け取りできませんとずっと言っていたのですが……
［君入 宗太郎］
うんうんうんうんうん
［山ノ下 かほり］
恐いねぇ
［犬］
ファンファンファンファン！
犬は吠えながら少女の腕に寄り添います。
［少女］
あ、ムサシ
ムサシが連れてきてくれたのね
少女はゴールデンレトリバーの頭を撫でます。
［君入 宗太郎］
あれ、それ、ムサシ？ 君の犬？
［少女］
はい、わたしの犬です
この子、ムサシって言うんです
［山ノ下 かほり］
散歩中？
［君入 宗太郎］
ま、ムサシいいことをしたね、ご主人の為に
でもカメラを取っちゃダメだぞ☆
［少女］
わたしは『橘 柚香』と申します
この子はわたしの犬のムサシと言います
お陰で助かりました、ありがとうございます
［君入 宗太郎］
いやぁ、よかったね
［山ノ下 かほり］
何も無くてよかった
［君入 宗太郎］
よくやったぞ、ムサシ
君入はムサシの頭をポンポンと撫でます。
［柚香］
皆さん、よろしければお名前を教えてくださいますか？
［石田 光路郎］
何で？
［柚香］
もしよかったら御礼をさせていただきたくて
［山ノ下 かほり］
いやいやいやいや、名乗るほどの者では
［君入 宗太郎］
俺イリリン
［山ノ下 かほり］
名乗るんかいｗ
［柚香］
イリリンさんですね
［君入 宗太郎］
イリリンでいいよ
イリリンって呼んでね
［柚香］
はい
イリリンさんはどんなお仕事をされてるんですか？
［君入 宗太郎］
僕～？ 突っ込むね、キミ
［山ノ下 かほり］
察してよ
平日の昼間だぞ
［柚香］
昼間だと不都合があるんですか？
［山ノ下 かほり］
平日の昼間にブラブラしてるってことで察してあげて
［君入 宗太郎］
いいよ、全然いいよ
俺ユーチューバーでがんばってるよ
［柚香］
ゆーちゅーばーって何ですか？
［山ノ下 かほり］
え？
YouTube を知らない？
［君入 宗太郎］
YouTube とか見ない？
［柚香］
ゆーちゅーばーわからないです
ゆーちゅーぶって何ですか？
［君入 宗太郎］
インターネットか見ないの？
これはまたどこぞの…………
［君入 宗太郎］
柚香ちゃんは何してる人なの？ 何年生？
［柚香］
わたしは中学一年生です
［石田 光路郎］
へ～～
［山ノ下 かほり］
見ず知らずの人に聞かれてそんなペラペラしゃべってたら危ないよ
お姉さんはキミが心配だよ
［柚香］
そうなんですか？
お姉さんの名前は何て言うんですか？
［山ノ下 かほり］
「お姉さん」です
［少女］
ネイサンさんですか？
［君入 宗太郎］
ｗｗｗｗｗ
［石田 光路郎］
ネイサン…………姉さんだね
［山ノ下 かほり］
天然か？
［柚香］
天然？
［君入 宗太郎］
ちょっと変わった感じの子だね
［柚香］
そちらの男性も……
［石田 光路郎］
ゴホゴホゴホッ！ ゲホッゲホッ！
［山ノ下 かほり］
光路郎、カゼ？
［柚香］
大丈夫ですか？
［石田 光路郎］
そうそうそう、マスクしてるでしょ
［君入 宗太郎］
いま外してるじゃん
光路郎ははこの子をどこかで見たことがあることに気付きました。
いつかのパーティのときにいた、名家・橘の令嬢であることを思い出しました。
［石田 光路郎］
キミもしかして、橘家のお嬢さん？ あの、有名な…………
君入 宗太郎【アイデア】⇒ 成功
山ノ下 かほり【アイデア】⇒ 成功
光路郎から「橘」と聞き、宗太郎とかほりは公園の近くにある名家の令嬢に似ているなと気が付きました。
［山ノ下 かほり］
橘家と言えば……
［石田 光路郎］
この近くのあのでっかい家の
［君入 宗太郎］
あ～～ね、近くにスゴイ名家があるって言うのだけは聞いたことがあるなあ
そこのお嬢さんなの？
［柚香］
あ、はい
［石田 光路郎］
すげー箱入り娘さんだな
［山ノ下 かほり］
散歩中？
［柚香］
えっとぉ、散歩中というか…………
家でずっと勉強させられていましたので、今日はお父様もお母様もいないのでちょっと抜け出してみようと思って…………実はちょっと、ムサシと一緒にこっそり家を出てきたところなんです
［山ノ下 かほり］
家を出るって、家出っていう意味？
ただの外出？
［柚香］
はい
［山ノ下 かほり］
何だよ、心配させんなよ
［柚香］
すみません
［君入 宗太郎］
そうなんだー
じいやとかは？
［石田 光路郎］
いそうだねｗ
［柚香］
今頃わたしを探しているかも知れません
［山ノ下 かほり］
もう危ないから今日は家に帰ったほうがいいんじゃない？
送ろうか？
［石田 光路郎］
たまにはいんじゃないの？
［柚香］
このタイミングしか無いので
わたし行きたいところがあるんです、みなさん
［君入 宗太郎］
行きたいところ？
［柚香］
みなさんは「ショッピングセンター」というところを知っていますか？
［君入 宗太郎］
ショッピングセンターは行ったことあるけど
近くのでしょ？
［柚香］
「イオン」って言ってました
友だちのお話しに良く出てくるのですが、わたし行ったことがなくて
［君入 宗太郎］
ふぅ～～ん
そっか、イオンに行きたいの？
［柚香］
お話しによるととても楽しいところだそうで
［君入 宗太郎］
まーね
でもねえ、行くんならね、１９時２０時台の食品が安くなっているときぐらいがいいよ、柚香ちゃん
［石田 光路郎］
ちょっと早すぎるな
［君入 宗太郎］
だから今日はお帰りよ
［山ノ下 かほり］
（いま何時だ）
今は１２時を少し過ぎたところです。
［山ノ下 かほり］
ダメだよ危ないよ、と言うほどには子どもじゃないか
［君入 宗太郎］
かほりちゃんがついてきてくれるなら行こうかな
［山ノ下 かほり］
えっ、連れてくの？
［君入 宗太郎］
時間が無いならいいけど
［山ノ下 かほり］
時間ないことはないけどさ～
そうなるとおうちの人に連絡とかしないとさあ
［石田 光路郎］
俺は連れてってもいいと思うんだけど、男が連れてくと問題あるでしょ
［君入 宗太郎］
石田っちだけで連れていくと事案になっちゃう
［石田 光路郎］
通報されるからさあ
［山ノ下 かほり］
大人３人いたとしても中一の女の子一人を連れてくってなると
［石田 光路郎］
最低限、やっぱ連絡はしてもらわないといけないとは思う
そのじいやとやらに
［柚香］
大丈夫です
出てくるときにショッピングセンターに行きますと書いてきたので
［石田 光路郎］
置き手紙か
［柚香］
ショッピングセンターに行こうと思ったら突然さっきの人が来て
［山ノ下 かほり］
置き手紙してきたんだったら道案内ってことで……？
［石田 光路郎］
いやあ、それどうなん？
［山ノ下 かほり］
光路郎、宗太郎だけだとちょっとマズイだろうけどね
わたしが行けばいいんでしょ
［君入 宗太郎］
そうだな
［山ノ下 かほり］
三人で案内する？
［君入 宗太郎］
僕は全然ヒマだから☆
［石田 光路郎］
むしろ案内してあげたいよ
［山ノ下 かほり］
オイ？ 違う意味を持つなあ
［君入 宗太郎］
ムサシは連れて行けないかも知れないなぁ
［山ノ下 かほり］
外につないだりできるかな
［柚香］
ショッピングセンターではペットをペットショップで預かってくれるって友だちが言ってました
［石田 光路郎］
まじか
［柚香］
あなたのお名前は何というんですか？
［石田 光路郎］
お兄さんだよ
［柚香］
「オニイサン」さんですね
イリリンさんとネイサンさんとオニイサンさんですね
［山ノ下 かほり］
すみません、かほりです
［石田 光路郎］
石田です
［山ノ下 かほり］
光路郎です
［石田 光路郎］
何で下の名前？
［山ノ下 かほり］
宗太郎と光路郎でいいじゃん
［君入 宗太郎］
俺イリリンだから☆
［柚香］
分かりました
イリリンさんとかほりさんと光路郎さんですね
［柚香］
じゃあ、ショッピングセンターに連れて行ってくださーい
［君入 宗太郎］
はーい
じゃ、行こう
大きい犬が苦手なかほりはムサシから離れ、宗太郎はムサシを撫でながら、三人は柚香をショッピングセンターに連れてきました。
柚香の友だちに聞いた通り、ムサシをペットショップに預けました。
［君入 宗太郎］
ムサシ寂しいだろうな
［石田 光路郎］
賢い犬だからな
［山ノ下 かほり］
どこ行くの？
［石田 光路郎］
ショッピングセンターで何したいん？
［柚香］
いろいろ見て回りたいんです
［柚香］
あれ何ですか？
柚香はショッピングセンターに入ってすぐのお店に近付いていきます。
［柚香］
何ですか、このニオイ
［君入 宗太郎］
石鹸のお店じゃないかな
［柚香］
このお店すごいニオイですね
［君入 宗太郎］
ちょっと入ってみる？
［柚香］
入りたいです
宗太郎は柚香に耳打ちをします。
［君入 宗太郎］
欲しいものはあのおじちゃんに言うんだよ
［石田 光路郎］
同い年だぞ
誰だよおじちゃんって
［柚香］
わたし実はちゃんとお金持ってきたんです
柚香はウエストポーチの中から財布を取り出して、近くにいる宗太郎だけに見せます。
財布の中には５０万円ほどのお金が入っています。
［君入 宗太郎］
柚香ちゃん……すごい、ね？
［君入 宗太郎］
どうしたのそれ？ それは、何か、あれ？ お小遣い、的な？
［柚香］
はい
［君入 宗太郎］
あ～～、そうなんだ～
何かが目からこぼれ落ちそうで、宗太郎は宙を見ます。
［柚香］
これ、もしもの時のためにって言われてて、いつもこっちを使いなさいって言われてるんです
柚香は財布からカードを取り出しました。
［君入 宗太郎］
どうしたの、それも
あ～あ～、そっか～～
宗太郎は下を向きます。
［石田 光路郎］
君入、急に涙ぐんでどうした？
［君入 宗太郎］
いやいや、こっちの話……全然、全然……
［君入 宗太郎］
あっちに泡を体験できるコーナーがあるからさ、泡を触りに行こうぜ
［柚香］
泡ですか？
柚香は宗太郎について行き、泡を触ります。
［柚香］
あ、なんかヌルヌルしますね
［君入 宗太郎］
ヌルヌルｗ
［柚香］
このすごいニオイのする泡は何に使うんですか？
［君入 宗太郎］
顔を洗ったりとか体を洗ったりとか、普通に石鹸だよ
［柚香］
え、これで顔洗ったり体を洗ったりするんですか？
へ～、このようなニオイのするものでお体を洗ったりするんですね
すごいですね
［君入 宗太郎］
柚香ちゃんもしかして固形石鹸見たことない系？
［柚香］
固形石鹸……これが噂に聞く……
［山ノ下 かほり］
普段どんな噂してんのｗ
［君入 宗太郎］
まあ、何か機会があったら試してごらん
［柚香］
はい、わかりました
こんなの買う人がいるんですね～
［君入 宗太郎］
（ちょっと天然すぎるな）
あなたたちは大きめの声で話していたので、店員さんはとても怪訝な顔でチラチラとこちらを見てきます。
［君入 宗太郎］
他にも見て回る？
［柚香］
わたし、お友だちに聞いたんです
とてもいっぱい同じお洋服が売っているところがあるって
［君入 宗太郎］
あ～、なるほど
［石田 光路郎］
ユニクロ行こうぜ
［君入 宗太郎］
２階にあるよね
［山ノ下 かほり］
じゃあエスカレーターで行こうか
あなたたちがショッピングセンターの２階に行くとユニクロがありました。
［君入 宗太郎］
柚香ちゃんここかな？
［柚香］
そうです、これですこれです
柚香は店頭に販売されているセーターを手に取ってみます。
［柚香］
ここがあのユニクロなんですね
［君入 宗太郎］
みんな大好きユニクロなんですよ
［柚香］
皆さん好きなんですか？
柚香は光路郎とかほりのほうを見ます。
［山ノ下 かほり］
うん、よく買うよ
［君入 宗太郎］
ちょっと今度はかほりちゃんが案内してみて
［山ノ下 かほり］
案内、とな？
［山ノ下 かほり］
何が欲しいの？ 何か欲しいものあるの？ 何が欲しいんだっつーの
［石田 光路郎］
何でそんな詰めるような言い方ｗ
［柚香］
あ、このセーター買おうかなと思ったんですけど……とてもペラペラですね
［山ノ下 かほり］
そういう生地だ
厚手のがいいの？ 厚手の探す？ リブ編みのとかあるんじゃない？
［柚香］
いろんなのがあるんですね
［柚香］
そうだ、皆さんよかったら何か欲しいものがあったらわたし今日のお礼として何か買いますよ
［石田 光路郎］
いやいや、流石に
［山ノ下 かほり］
ん～、まずは自分が欲しいもの買いなよ
何が欲しいの？ セーター買う？ ペラペラだからヤダ？
ダウン買う？ ウルトラライトダウンおすすめだから
［柚香］
ウルトラライトダウン？
［山ノ下 かほり］
ダウン・オン・ザ・ダウンしよ
［石田 光路郎］
あれあったかいからね
［柚香］
じゃあわたし、これとこれとこれとこれとこれとこれとこれとこれとこれとこれとこれとこれとこれと…………
［山ノ下 かほり］
オーイ、マイケルか
［君入 宗太郎］
そんなに要る？
柚香ちゃん他にもいいものあるかもしれないから２，３個にしようよ
［石田 光路郎］
荷物になるから買うの後でよくない？
［山ノ下 かほり］
とりあえず柚香、言っておくことがある
［柚香］
はい？
［山ノ下 かほり］
そんな大量に買ってもわたしたちは持ってあげないよ？
自分の手に持ってる分だけにしなさいよ
［柚香］
店員さんが届けてくれるんじゃないですか？
［山ノ下 かほり］
ううん、そんなシステムじゃないよ、ユニクロは
［柚香］
はぁ～、そうなんですね
皆さんお買い物大変ですね
［石田 光路郎］
そうなんだよ、下々の者は
［山ノ下 かほり］
だから自分の欲しいもの自分が持てるだけの量にしなさい
［柚香］
わかりました
じゃあこのウルトラライトダウンジャケットにします
［君入 宗太郎］
いいじゃん、何色にするの？
［柚香］
じゃあこのオリーブ色のやつ買います
［君入 宗太郎］
いいじゃん
